タイトル |
牛の性選別精液利用による経済効果 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所 |
研究期間 |
2007~2010 |
研究担当者 |
佐々木修
佐藤正寛
石井和雄
長嶺慶隆
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発行年度 |
2010 |
要約 |
雌として選別されたホルスタイン種の性選別精液を用いて、自家産子牛により牛群規模を維持しつつ、ホルスタイン種雄子牛よりも高価な交雑種(F1)子牛の生産量を増やすことができる。このことで、人工授精費用が上昇しても農業所得を増やせる。
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キーワード |
酪農、性選別精液、交雑種生産、経済効果、農業所得
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背景・ねらい |
近年、性の的中率90%の性選別精液が販売されている。しかし、通常の精液に比べて高価であること、性選別の操作によって受胎率が低下するとされていることから、性選別精液利用の効果は明確ではない。そこで、性選別精液を利用して、ホルスタイン種雄子牛の代わりに、より高価な黒毛和種との交雑種(F1)を生産した時の経済効果について検討する。
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成果の内容・特徴 |
- 年あたりの分娩頭数を制御して、牛群内でホルスタイン種と黒毛和種の2種類の精液を利用する時の農業所得を算出するモデルを作成する。
- 年あたりの分娩頭数60頭(内初産18頭)の牛群において、性選別精液を利用しない場合(条件1)と、雌子牛生産用に選別されたホルスタイン種の性選別精液を利用する場合(条件2)を比較する。
- 性選別精液の性の的中率は90%にする。初産牛への黒毛和種精液交配率を70%にする。経産牛へのホルスタイン種精液の交配は牛群規模維持に必要な数のみとし、残りの経産牛へは黒毛和種精液を交配する。
- 精液の価格は品種に関係なく通常精液を3千円、性選別精液を10千円にする。ホルスタイン種雄子牛の販売価格を25千円、F1雌子牛販売価格を70千円、F1雄子牛の販売価格を120千円にする。
- 受胎率が5%異なる2つの地域(A,B)を仮定する(表1)。性選別精液の受胎率は通常精液よりも5%低いと仮定する。年あたりの乳生産量は初産牛が8,200kg、経産牛が9,400kgにする。
- 受胎率は、条件2で条件1より低いが、黒毛和種精液利用率が高くなるため、通常精液と性選別精液との受胎率の差より低下は小さい(図1)。
- 条件2は条件1に比べて、ホルスタイン種雄子牛の生産量を減らしてF1生産量を増加させられる(図2)。
- 条件2は条件1よりF1子牛の生産量が増えるため、子牛販売収入が1,383千円上昇する。そのため、授精費用は527~587千円上昇するが、農業所得は531~605千円上昇すると期待される(図3)。
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成果の活用面・留意点 |
- 性選別精液の利用により、自家産子牛で牛群規模を維持しつつF1子牛の生産量を増やすことが可能である。それによって、人工授精費用が上昇しても農業所得を増やせる。
- F1子牛とホルスタイン種雄子牛の価格差が43千円以下になるなど、条件によっては農業所得が上昇しない時もある。
- ここで作成した農業所得算出モデルを用いれば、条件を変えた場合の性選別精液の経済効果の検討も可能である。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
乳牛
品種
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