タイトル |
2009年のウズラ由来H7N6亜型高病原性鳥インフルエンザウイルスの感染経路の推定 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所 |
研究期間 |
2008~2010 |
研究担当者 |
内田裕子
金平克史
真瀬昌司
竹前喜洋
渡辺千晶
笛吹達史
藤本佳万
伊藤壽啓
五十嵐学
伊藤公人
高田礼人
迫田義博
岡松正敏
山本 祐
中村菊保
喜田 宏
廣本靖明
津田知幸
西藤岳彦
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発行年度 |
2010 |
要約 |
2009年2~3月に愛知県で分離されたH7N6亜型高病原性鳥インフルエンザウイルス(HPAI)の分子疫学的解析及び感染性・伝播性試験の結果から、このウイルスが数年間ウズラの間で維持されていたことが示唆される。
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キーワード |
H7N6亜型高病原性鳥インフルエンザ、ウズラ
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背景・ねらい |
2009年2~3月にかけて、愛知県が実施した高病原性鳥インフルエンザ強化モニタリング調査により、ウズラからH7N6亜型の鳥インフルエンザウイルスを分離した(A/quail/Aichi/1/09-A/quail/Aichi/6/09:QA1~6株)。ウイルスの感染経路解明に資するため、本課題では分離したQA1~6株の全遺伝子配列の解析を行い、QA1の動物に対する感染性・伝播性を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- HAの開裂部位のアミノ酸配列(PKRR)から鶏に対する病原性は低いと推定される。系統樹解析では全分節でQA1~6株のみが属する一群のクレードを形成し(図)、既知のウイルスとのHA遺伝子の塩基配列の相同性は低い(87-88%)。QA1~6株が共通の祖先ウイルスから分岐した年代は、北米型のH7亜型ウイルスの進化速度を基準にすると、2002年3月から2004年7月の間と推定される。
- HAタンパク上の糖鎖結合部位の数や位置はQA1~6株のウイルスに特徴的で、それらがレセプター結合部位近傍に多く存在することから、宿主内での中和抗体の上昇が阻害される可能性を示唆している。
- QA1を実験的に経鼻接種した際に、家禽(ウズラ、ニワトリ及びアヒル)と哺乳動物(ブタ及びマウス)に不顕性感染するが致死率は低く(0%)、臨床症状も示さない。QA1感染ウズラは全て抗体陽性となり、ウイルス分離も可能となる。一方、ニワトリの感染では66.7%の抗体陽性率にとどまるが、ウイルスは分離される。さらにアヒルでは抗体は陽性になるもののウイルスは分離されない。以上のことから、ウズラに対するQA1の感染性はニワトリやアヒルに比べて高い。QA1の伝播性としては、ウズラ間では直接・飛沫感染が成立し、ニワトリ間での直接・間接接触による感染及びウズラ・ニワトリ間での間接接触による感染は成立しない。
- 以上の結果をまとめてQA1~6株の感染経路を推察すると、QA1~6株の共通祖先であるウイルスが2002年3月から2004年7月頃に侵入した後、ウズラ間で循環していた可能性が示唆される。
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成果の活用面・留意点 |
- ウズラ由来H7N6亜型の鳥インフルエンザウイルスの様な家禽の症状が顕著に現れないウイルスをも発見できる強化モニタリングにより、本発生規模が拡大することなく終息できたため、今後のインフルエンザ発生を制御する上で大変重要な手段であることが裏付けられた。従って、今後も強化モニタリングを行うことを推奨する。
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図表1 |
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カテゴリ |
アヒル
鶏
豚
モニタリング
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