ダム基礎地盤に使用された水ガラス系グラウト材の長期止水性の評価

タイトル ダム基礎地盤に使用された水ガラス系グラウト材の長期止水性の評価
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所
研究期間 2009~2010
研究担当者 田頭秀和
中嶋(浅野)勇
増川 晋
林田洋一
発行年度 2010
要約 水ガラス系グラウト材の長期止水性を積算透水量によって評価できることを明らかにする。ダム基礎地盤における水ガラス系グラウト部の長期止水性を定量的に予測することが可能となり、長期供用ダムの安全管理に活用できる。
キーワード ダム基礎地盤、水ガラス系グラウト材、長期止水性
背景・ねらい 1983年に策定された「グラウチング技術指針・同解説」によりダム基礎地盤のグラウト材としての薬液使用が禁止されたが、それ以前のダムでは基礎地盤の止水性向上のために薬液注入による基礎処理が実施された事例がある。ダムの長期的な安全性評価のためには、堤体だけでなく基礎地盤の長期安全性の評価が必要であるが、薬液処理地盤の止水性能を対象とした長期耐久性に関する研究事例は少なく、未解明な部分が多い。そのため、薬液注入が実施された既設ダム基礎地盤の現状と長期的な止水性を定量的に評価できない状況である。そこで、このようなダム基礎地盤で使用された薬液グラウト材である水ガラス系グラウト材(懸濁型、無機溶液型、有機溶液型の3種類)を対象にして、ダム貯水池の水位変動に着目した室内試験を実施し、長期止水性に対する影響因子を明らかにするとともに、長期水浸状態の安定性を評価する。
成果の内容・特徴
  1. 水ガラス系固結砂(写真1)の止水性は、懸濁型、無機溶液型、有機溶液型に共通して7日材令以降は変化しない(図1)。
  2. 水の取り換えを行わない場合と供試体内部での水の流れを与えずに水の取換えを行う場合の2つの条件下で供試体を水浸させたところ、28日間の水浸後の供試体の止水性に差は認められない。このことから、基礎地盤中の水の流れを伴わない水浸状態での水ガラスの溶出は、止水性に影響しないと推測できる。
  3. 供試体内部での一定方向の水の流れを与えた場合、止水性と積算透水量(透水開始からの総透水量)の関係は、積算透水量が増えるに従って止水性が低下する(図2)。このことから、ダム基礎地盤では、透水による水ガラスの流出によって止水性が低下すると推測できる。また、40mの貯水位変動に相当する圧力の繰返し変動を30回作用させた後に透水を行った無機溶液型供試体では、積算透水量が500ml/cm2程度迄は圧力の繰返し変動を与えない供試体と同様の止水性漸減を示すが、積算透水量が700ml/cm2程度に達すると透水係数が約10倍増加して急激に止水性が低下する(図2)。このことから、ダムの貯水位の繰返し変動の影響で止水性が低下する可能性があると言える。
  4. 得られた止水性と積算透水量との関係を用いることで、ダム基礎の水ガラス系グラウト部の長期止水性の予測が可能となり、長期供用ダムの安全管理に活用できる。
成果の活用面・留意点 水ガラス系グラウト材の種類による止水特性の差異と、地盤材料の種類や物性のばらつきに留意が必要である。また、ダム基礎地盤全体の止水性は、断面設計(グラウトエリアの配置、採用するグラウト材の種類および数など)に大きく影響されることに留意する必要がある。
図表1 234596-1.png
図表2 234596-2.png
図表3 234596-3.png
カテゴリ 安全管理

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