繰り返し荷重によるフィルダム堤体挙動を予測するための数理モデル

タイトル 繰り返し荷重によるフィルダム堤体挙動を予測するための数理モデル
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所
研究期間 2009~2010
研究担当者 林田洋一
増川 晋
中嶋(浅野)勇
田頭秀和
発行年度 2010
要約 繰り返し載荷時のフィルダム堤体の力学的挙動を精度良く表現する数理モデルである。これにより、供用時の貯水位変動や地震動によって、荷重が繰り返し加わる際の既設ダム挙動予測の精度向上に資する。
キーワード フィルダム、繰り返し荷重、数理モデル、数値解析、挙動予測
背景・ねらい 供用中の既設ダムにおける維持管理の一環として、大規模地震時においても、ある程度の損傷は許容するが大きな損傷は生じさせないといった減災対策が求められる。ダムの場合、貯水が堤体を越流すると下流域に多大な被害を発生させることから、貯水がダム堤体を越流しない程度の変形(沈下)を許容することが求められる。そのため、繰り返し荷重(地震時等)による堤体の変形や体積変化を定量的に予測することが重要となる。しかしながら、フィルダムの材料である地盤材料は、顕著な非線形挙動を示す。また、土粒子およびその間隙に存在する空気と水から成る多相混合体であることから、複雑な力学的挙動を示し、現状では、定量的な変形量の予測は困難である。そこで、供用中の貯水位変動や地震動による荷重の繰り返しに伴う変形や体積変化を再現できる数理モデルを開発し、既設フィルダム堤体の変形量予測に資する。
成果の内容・特徴
  1. 今後のフィルダムの安全性評価に求められる、変形量による性能照査を実施するための技術の核である数理モデルを開発した(図1)。モデルの特徴を以下に示す。
  2. 顕著な非線形性を示す地盤材料(フィルダム堤体材料)の力学的特性を表現するため、現在の応力点を通り降伏面と相似な負荷面を設定し、正規降伏面と負荷面との相似比と、正規降伏面上の共役応力点で計算される塑性係数により、現応力状態での塑性係数を算定し、弾塑性計算を行う(図2(a))。これにより、載荷初期から地盤材料の弾塑性挙動を再現することが可能である。
  3. 上記の数理モデルにおいて、荷重の方向が反転した際に、負荷面と降伏面との相似中心が、反転時の応力点に移動し、負荷面もその応力点へと縮退することとする(図2(b))。これにより、応力反転時には純粋な弾性状態となる。その後は、再び負荷面が拡大することから、弾塑性挙動を示す(図2(c))。このように、相似中心の移動を制御する関数を必要とせず、簡易に地盤材料が繰り返し載荷時に示す応力-ひずみ関係のヒステリシス(往路と復路で経路が一致せずループを描く現象)を再現することが可能である。
  4. 地盤材料を用いた繰り返し三軸試験を実施し、その結果を数理モデルによる予測値と比較した。数理モデルは、単調荷重による非線形挙動や繰り返し荷重によるヒステリシスを定量的に再現することが確認された(図3)。このように、開発した数理モデルは、繰り返し荷重による地盤材料の変形や体積変化を定量的に予測することが可能である。
成果の活用面・留意点 開発した数理モデルを数値解析に適用することで、供用時の貯水位変動や地震動により繰り返される荷重の増減に伴う、フィルダム堤体の挙動予測精度の向上が可能になる。広範な地盤材料や実際のフィルダムの変形挙動予測への適用は、今後の検証が必要である。また、体積変化挙動の再現性については、更なる精度の向上が求められる。
図表1 234608-1.png
図表2 234608-2.png
図表3 234608-3.png
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