タイトル |
中山間地に適する建設足場資材を利用した低コスト・高強度な園芸ハウス |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 近畿中国四国農業研究センター |
研究期間 |
2007~2010 |
研究担当者 |
長﨑裕司
川嶋浩樹
畔柳武司
吉村亜希子
岡田牧恵
河内博文
日高輝雄
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発行年度 |
2010 |
要約 |
建設足場資材利用園芸ハウスは、改良スパイラル基礎杭を利用することで水平方向の力に対する変位を低減できる。間口5.4m片屋根型単棟で奥行きが30mを超えると、1平方メートル当たりの骨組み資材費が4,000円以下の水準になる。
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キーワード |
建設足場資材、ハウス、基礎杭、高強度、低コスト化
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背景・ねらい |
日本の施設園芸で約7割を占めるパイプハウスは耐風性や耐積雪性が劣り、近年増加してきている防虫網を側窓等の開放部に組み込んだ条件では換気性の低下も大きいことから、低コストで導入可能な高強度・好換気性ハウスが求められている。 建設足場資材を利用した園芸ハウスは、耐風速35m/s以上とされる鉄骨補強型パイプハウスと同程度の強度を有し、約8割のコストで施工できることが明らかにされている。そこで、省力施工を維持しながら基礎強度を高め、大きさや方位の異なる狭小な中山間の棚田に合わせて、低コストで適切に設計・施工する技術開発と保温設備の導入が必要である。
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成果の内容・特徴 |
- 建設足場資材利用園芸ハウスで使用するスパイラル基礎杭は、設置に重機による掘削を必要とせず省力施工が可能である。支柱差し込みパイプを20cm延長し土中に貫入できる形状に改良することで(図1)、垂直耐力の低下を伴わず、水平方向に力が加わった場合の変位量を半分以下に抑えることができる(図2)。
- 資材コストは、片屋根型単棟で奥行きが36~60m(間口5.4mで面積は約2~3a)であれば、1平方メートル当たり4千円の水準を下回る(骨組みのみ、被覆資材を除く)。東西に長い棚田に南北棟を設置せざるを得ない場合は、奥行き長さを短くしなくてはならないことから5千円程度と割高になる(図3)。
- 設置棚田の幅が比較的広く間口を6m以上にする必要がある場合には、中柱を設けて両屋根構造にすることが可能である。東西棟では採光性を考慮して南側屋根幅の広いスリークォータ型にすることも容易である(図4(a))。
- 支柱頭部と屋根パイプの接合に強度の大きい金具を利用していることから、屋根面の方づえ補強は足場用鋼管を安価な自在クランプで接合する方法でもよい(図4(b))。
- 軒高3m以上を確保することで、内部に保温等に用いる内張フィルム資材を2重張りできる構造を設けることができる。手動式の開閉機構も取り付けられる(図4(c))。
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成果の活用面・留意点 |
- 本成果は平成19年度成果情報「オーダーメイド化を可能にする平張型ハウス施工法」に基づいて、現地での施工実績データからコスト等を取りまとめている。具体的な施工方法については近中四農研ホームページの「平張型ハウス設計・施工マニュアル(暫定版)」を参考にされたい。
- スパイラル基礎杭の埋設は地盤が比較的軟らかい状態では、支柱差し込みパイプ頭部の穴に長さ1m程度のφ12mm丸棒を通すなどしてねじ込み施工を行い、硬くてねじ込めない場合には長さ40cm程度の足場用鋼管を被せてハンマーで打込み施工を行う。なお、砂質土では十分な耐力が得られないので注意を要する。
- 好換気性を確保するためには、低い方の軒高は2m以上、高い方は3m以上確保する。
- 東西に長い棚田で低コスト化に有利な東西棟でトマトなどの栽培を行う場合には、条間や誘引方法を工夫するなどして収量低下の少ない栽培方法を検討する必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
コスト
施設園芸
中山間地域
低コスト
トマト
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