タイトル |
トラクタ評価試験の計測精度の管理方法 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 生物系特定産業技術研究支援センター |
研究期間 |
2006~2010 |
研究担当者 |
手島 司
原野道生
松尾陽介
高橋弘行
積 栄
杉浦泰郎
清水一史
西川 純
千葉大基
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発行年度 |
2010 |
要約 |
統計手法を適用して計測値のばらつきの要因と影響の程度を検討し改善する計測管理方法である。トラクタ評価試験の計測精度や信頼性を維持・向上できる。
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キーワード |
不確かさ、校正、試験条件、分散分析、国際規格
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背景・ねらい |
測定結果の精度に関しては近年、測定結果のばらつきの範囲を統計的に表現するという考え方(不確かさ)が用いられるようになり、国際規格をはじめとして、測定の信頼性の概念が変わりつつある。このため、国際規格ISO/IEC17025に定められている試験機関としての要件のうち、技術的要求事項における評価手法について、農業機械の評価試験へ適用することで、評価試験の計測精度や信頼性の維持・向上を図る。
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成果の内容・特徴 |
- トラクタ評価試験において測定値のばらつき(測定の不確かさ、図1)に影響すると考えられる試験条件を変えながら反復する実験によって、ばらつきの要因とその大きさを把握できる。具体的には、実験結果を分散分析(Microsoft Excel等市販ソフトに備わる分析ツールを使用)することにより、ばらつきの要因に該当する試験条件の不確かさが推定できる。例えば、油圧性能試験における作動油圧力測定では、測定者4名で6回繰返した実験結果を分散分析し、測定者の個人差や繰返しによる影響(標準不確かさ)を見積もることができる(表1)。
- 計測器の校正成績等を加味して不確かさの値を合成(二乗和の平方根等)した上で比較・評価が可能である。また合成した不確かさは、係数(包含係数k)を掛けて測定値の信頼区間を示すことができる。例えば、油圧性能試験における作動油圧力測定では、圧力計の校正成績と比した測定の個人差や繰返しによる影響、測定値のばらつきの範囲を把握できる(表2)。
- 測定の不確かさ評価等をもとに、計測精度の維持・向上のための方策を検討し実施することにより、トラクタ評価試験において測定値のばらつきが低減できる。例えば、油圧性能試験では流量制御バルブの操作方法を間接操作から直接操作に変更することで測定者の個人差による影響が低減できる。また、制動試験の制動距離測定では、計測器校正の不確かさのほか、測定者の個人差や繰返し性が不確かさ要因と考えられ、クラッチペダルとブレーキペダルを踏込むタイミングを合わせる方策により、繰返しによる影響を低減できる(表3)。
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成果の活用面・留意点 |
- 国際規格に基づく計測精度の管理が、トラクタ等農業機械の評価試験に適用できる。
- 各計測器の校正サイクルに合わせた測定の不確かさ評価等の実施により、試験要員の計測技術や計測精度等の維持・向上が期待できる。それに伴う改善は適宜マニュアル化するなどして運用する。
- 測定の不確かさ評価に用いる分散分析は、市販ソフトのほか、より多くの試験条件に対し分析可能なプログラム(例:AIST-ANOVA、(独)産業技術総合研究所)もインターネットで公開されており、無料で利用できる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
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