イネ穂発芽耐性遺伝子Sdr4の単離

タイトル イネ穂発芽耐性遺伝子Sdr4の単離
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究期間 2005~2010
研究担当者 杉本和彦
竹内善信
江花薫子
宮尾安藝雄
廣近洋彦
原 奈穂
石山賀奈子
小林正智
伴 佳典
服部束穂
矢野昌裕
発行年度 2010
要約 イネの穂発芽耐性遺伝子Sdr4を単離し、Sdr4が種子の発達過程で休眠性を誘起する因子であることを明らかにした。多様なイネ品種の発芽率とSdr4の塩基配列を比較した結果、Sdr4は休眠性の決定に重要な役割を果たしていることが示唆された。
キーワード 穂発芽耐性、種子休眠性、イネ、DNAマーカー選抜
背景・ねらい 穂発芽は収穫前に穂に実った状態で種子が発芽してしまう現象で、これにより穀物の品質が大きく損なわれる。現在、日本で広く栽培されているコシヒカリは比較的強い穂発芽耐性を有しているが、その他の品種の中には穂発芽耐性が十分でないものもある。さらに同じイネ科のコムギにおいて、穂発芽は深刻な問題であり、平成7年には北海道を中心に100億円以上の損害を与えたとされている。このように穂発芽耐性は農業上重要な形質であることから、その遺伝子特定と機能解析に取り組んだ。
成果の内容・特徴
  1. インド型品種Kasalathに由来するSdr4は第7染色体長腕に座乗し、これをもつ日本型品種日本晴の準同質遺伝子系統NIL[Sdr4]は、強い穂発芽耐性を示す(図1)。
  2. マップベース・クローニング法によりSdr4の原因遺伝子がOs07g0585700であることを明らかにし、この遺伝子を含む断片を穂発芽耐性の弱い日本晴に導入した結果、発芽を抑制することができた(図2)。
  3. インド型品種は発芽抑制効果の高いKasalath型のSdr4と機能の低い日本晴型Sdr4をもつ品種に分かれるが、日本稲はすべて日本晴型Sdr4を持っていた。
  4. イネコアコレクションの発芽率とSdr4の遺伝子型を比較したところ、Kasalath型のSdr4を持つ品種は発芽率が低かったことから、Sdr4が休眠性の決定に重要な役割を果たしていることが示唆された。
  5. Sdr4は種子の登熟を制御する転写調節因子OsVP1により正に制御され、休眠への関連が示唆される転写調節因子OsDOG1L2の発現を正に制御していることが示された(図3)。種子休眠性を失ったsdr4変異体種子の発芽は植物ホルモンのアブシジン酸(ABA)に対して感受性が低下しているが、LEA等の乾燥ストレス耐性遺伝子のABA応答性は維持されているため、Sdr4は種子休眠特異的な制御因子であることが示唆された。
成果の活用面・留意点
  1. コシヒカリのNIL[Sdr4]では穂発芽耐性が増大したことから、Sdr4をDNAマーカー選抜によって導入することにより、穂発芽耐性の品種改良が可能である(図4)。
  2. 穂発芽耐性がさらに重要なコムギへの利用が期待されることから、Sdr4のコムギ同祖遺伝子の解析に取り組んでいる。
図表1 234841-1.png
図表2 234841-2.png
図表3 234841-3.png
図表4 234841-4.png
カテゴリ 乾燥 DNAマーカー 品種 品種改良

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