広範な植物病原菌に対して抵抗性を付与するイネの遺伝子を発見

タイトル 広範な植物病原菌に対して抵抗性を付与するイネの遺伝子を発見
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究期間 2005~2010
研究担当者 Dubouzet Joseph G.
前田 哲
菅野正治
大武美樹
林 長生
廣近洋彦
高辻博志
森 昌樹
発行年度 2010
要約 イネの遺伝子を発現させたシロイヌナズナをスクリーニングする手法(FOXハンティング)を用い、複数の病害に対する抵抗性を付与する遺伝子BSR1をイネから発見した。BSR1は、双子葉植物のシロイヌナズナと単子葉植物のイネの両方で、細菌病および糸状菌病に抵抗性を示した。
キーワード イネ、シロイヌナズナ、病害抵抗性、糸状菌病、細菌病、リン酸化酵素
背景・ねらい 世界的な人口増加の下、飢餓の克服や食料の安定供給を図る上で、作物病害を防ぐことは極めて重要な課題である。細菌や糸状菌(カビ)は植物に病害を引き起こす主要な病原体である。その被害を農薬により防ぐ方法もあるが、植物自身の持つ抵抗性機構を強化した耐病性作物を開発することができれば、農薬散布にかかるコストや労力の低減が可能となる。特に、今後需要の増加が見込まれる飼料イネやバイオマス用作物などでは低コスト栽培が求められ、広範囲の病害に抵抗性をもつ性質が重要とされている。本研究では、シロイヌナズナを用いてイネの有用遺伝子を効率よく探索できるFOXハンティングという手法を用いて、複数の病気に効果のある病害抵抗性遺伝子の単離を図った。
成果の内容・特徴
  1. イネの遺伝子の約40%を網羅した完全長cDNA(13,000種)を発現する2万種類のシロイヌナズナ系統(イネFOXナズナ系統)を作出した。各系統にトマト斑葉細菌病菌(Pseudomonas syringae pv. tomato DC3000)を接種し、ほとんどの系統が病気に感染して死滅する中で生き残る抵抗性系統を72種選抜し、その原因遺伝子を特定した。
  2. 選抜された系統の1つは、シロイヌナズナに感染する病原糸状菌のアブラナ科野菜類炭疽病菌(Colletotrichum higginsianum)にも抵抗性を示した(図1)。これにより、この遺伝子は双子葉植物において細菌病および糸状菌病の両方に抵抗性を与えることがわかり(複合抵抗性)、この遺伝子をBSR1 (Broad-spectrum resistance 1,広範な病原菌への抵抗性の意)と命名した。
  3. BSR1を過剰発現する形質転換イネは、病原細菌(Xanthomonas oryzae pv. oryzae)による白葉枯病および病原糸状菌(Magnaporthe oryzae)によるいもち病に強い抵抗性を示した(図2)。いもち病抵抗性の程度は、極強のいもち病抵抗性品種「戦捷(せんしょう)」以上の非常に強いものであった。これにより、BSR1は単子葉植物でも複合抵抗性を与えることがわかった。
  4. BSR1は新規のリン酸化酵素をコードしており、イネの病原体感染情報を細胞内に伝えることにより抵抗性反応を誘導する仕組みの一部を担っていると推測される。
成果の活用面・留意点
  1. 飼料用イネやバイオマス作物でBSR1遺伝子を高発現することにより、複数の病原菌に抵抗性を有する系統の作出が期待される。
  2. 単子葉植物だけでなく双子葉植物への導入・高発現により、飼料、バイオマス、観賞用等の様々な作物の減農薬栽培を可能にすることが期待される。
  3. BSR1の機能解析により、イネの耐病性機構の解明に資することが期待される。
図表1 234847-1.png
図表2 234847-2.png
カテゴリ 病害虫 あぶらな いもち病 コスト 飼料用作物 炭疽病 抵抗性 抵抗性品種 低コスト栽培 農薬 病害抵抗性

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