生体防御機能を担うクッパー細胞の簡易連続単離方法の開発

タイトル 生体防御機能を担うクッパー細胞の簡易連続単離方法の開発
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究期間 2007~2011
研究担当者 木谷 裕
竹之内敬人
佐藤 充
山中典子
吉岡 都
発行年度 2010
要約 肝臓での異物排除や免疫応答を担うクッパー細胞を簡易に繰り返して回収する世界初の方法を開発した。肝細胞の混合培養系でクッパー細胞を増殖させた後、容器を振とうし、細胞浮遊液をプラスチックディッシュへ移して短時間培養することで、付着性の高いクッパー細胞のみを回収する。得られたクッパー細胞は肝臓疾患の病態解明や治療薬の開発などに大きく貢献する。
キーワード クッパー細胞、マクロファージ、肝細胞、混合培養系、振とう、付着性
背景・ねらい クッパー細胞は肝臓に特異的に存在する組織マクロファージの一種であり、異物の認識や免疫応答の誘導などの生体防御機能を担う細胞である。クッパー細胞は肝炎や肝硬変に対する創薬開発における標的細胞として重要であり、その単離法は30年以上前から開発・改良され、現在では細胞密度を指標にしたエルトリエーション遠心分離法が主流である。しかしながら、この手法では特殊な機器や熟練した技術が必要であり、また実験の都度、動物を犠牲にしてその肝臓からクッパー細胞を単離しなければならない。そこで本研究では、肝細胞の混合培養系で増殖させたクッパー細胞を簡易に、また繰り返して単離・回収できる効率的な新手法を開発した。
成果の内容・特徴
  1. 成体ラットの肝臓をコラゲナーゼ溶液で灌流・消化し、主として肝実質細胞からなる画分を単離してフラスコに初代培養した(図1A①~③)。その肝実質細胞が死滅あるいは線維芽細胞様の細胞へと変化して細胞シートが培養フラスコ底面に形成され、培養6~12日頃にかけてマクロファージ様細胞(クッパー細胞)が活発に増殖してくる(図1B)。
  2. 培養フラスコを振とうして、増殖したクッパー細胞を培養液中に浮遊させる。その細胞浮遊液をプラスチックディッシュへ移して短時間培養すると、クッパー細胞は極めて容易にディッシュへ付着するのに対して、その他の細胞はほとんど付着しない(図1A④~⑥)。この特性を利用することによって、1回の回収操作でフラスコ(底面積75cm2)あたり106個以上のクッパー細胞を選択的に単離できる(図1Aおよび図2)。
  3. クッパー細胞を含む細胞浮遊液を移した後のフラスコに新しい培地を加えて培養を継続すると、新たなクッパー細胞が細胞シート上で引き続いて増殖する(図1A⑦)。そのため、初回の単離(培養8日頃)以降、同様の方法で約2週間にわたり、2~3日おきに同じフラスコから繰り返してクッパー細胞を単離できる(図2)。
成果の活用面・留意点
  1. 特殊な機器や熟練技術を必要とせず、どこでも誰でも実施可能な効率的単離方法である。
  2. 癌遺伝子の導入によって不死化クッパー細胞株の作出が期待される。
  3. ラット以外の哺乳動物、例えばウシやヒトなどにも適用可能と考えられる。
  4. 単離したクッパー細胞を利用して、肝炎や肝硬変などクッパー細胞が深く関与する肝臓疾患の病態解明や治療薬の開発などに大きく貢献すると期待される。
図表1 234848-1.png
図表2 234848-2.png
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