ガスフラックスのモニタリングにもとづくイネ単作田の年間炭素収支とその年次間変動

タイトル ガスフラックスのモニタリングにもとづくイネ単作田の年間炭素収支とその年次間変動
担当機関 (独)農業環境技術研究所
研究期間
研究担当者 宮田 明
間野正美
小野圭介
滝本貴弘
発行年度 2010
要約 ガスフラックスのモニタリングの結果にもとづいて、イネ単作田の炭素収支を定量化し、年間収支は8年間平均でほぼ均衡しており、有機質資材の投入にくわえて、作付期間の正味の炭素吸収量が年次間変動の主な要因となっていることを明らかにしました。
背景・ねらい 陸域生態系による炭素吸収源機能を解明するため、農耕地や草原、森林で二酸化炭素フラックスのモニタリングが行われています。農耕地ではガス態での炭素移動にくわえて、収穫、作物残渣処理や有機質資材の投入などの圃場管理も炭素移動をともないます。そこで、ガスフラックスのモニタリング結果に非ガス態での炭素移動量をくわえて、アジア北東部の代表的な農業生態系であるイネ単作田の年間炭素収支を定量化しました。
成果の内容・特徴 モニタリングを実施した茨城県つくば市真瀬の水田は、慣行にしたがって水稲(品種はコシヒカリ)が栽培されている単作田で、2002~2009年の平均収量は5.2t ha-1(精玄米重)、土壌は灰色低地土、稲わらは主に収穫後に土中へ鋤き込む管理が行われています。
8年間の観測結果から、単作田の年間炭素収支の主要項は、植物の光合成・呼吸と土壌有機物分解にともなう水田-大気間の二酸化炭素(CO2)の交換と、収穫・作物残渣処理、および不定期に行われた有機質資材投入(8年間の平均値としては小さい)で、他の構成要素の寄与は小さいことがわかりました。作付期間の正味の炭素吸収量(作付期間のNEP)のおよそ半分が収穫時に持ち出され、残りの半分に相当する炭素量が休耕期間に有機物分解により大気中に放出されました(図1)。この結果、年間炭素収支は8年間の平均で-0.4±0.7t C ha-1y-1 (負値は流出)と、ほぼ均衡していました。炭素収支の年次間変動の主な要因は、作付期間のNEPと不定期に行われた有機質資材(堆肥)の投入であり、7月が多照で光合成によるCO2吸収量が多かった年(2004年)や、有機質資材投入量が多かった年(2007年)は、単年の炭素収支が流入となりました(図2)。なお、地球温暖化係数(IPCC第4次評価報告書)を考慮すると、メタンの発生量は1.0t C ha-1y-1のCO2流出に相当します。
この成果は、農地による炭素吸収源機能の評価のための基礎的な資料として活用できます。モニタリングデータの一部は、農業環境技術研究所のホームページ内のデータベース(URL: http://ecomdb.niaes.affrc.go.jp/)で公開しています。
成果の活用面・留意点 本研究は、農林水産省委託プロジェクト研究「地球温暖化が農林水産業に及ぼす影響の評価と高度対策技術の開発」による成果です。
図表1 234881-1.jpg
図表2 234881-2.jpg
カテゴリ 土づくり 肥料 水田 データベース 品種 圃場管理 モニタリング

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