| タイトル | チシマザサの生育域を気候条件から予測する |
|---|---|
| 担当機関 | (独)森林総合研究所 |
| 研究期間 | |
| 研究担当者 |
津山幾太郎 田中信行 小川みふゆ 松井 哲哉 小南 裕志 |
| 発行年度 | 2009 |
| 要約 | 日本の冷温帯・亜高山帯林の林床優占種の一つであるチシマザサについて、分布に大きな影響を与える気候要因とその閾値を明らかにするモデルを構築して、現在と100年後の生育可能な地域(潜在生育域)を明らかにしました。 |
| 背景・ねらい | 日本の森林植生の大きな特徴として、林床にササ類を伴うことが挙げられます。チシマザサは、多雪地域の冷温帯から亜寒帯に広く分布するササ類の一種です(図1)。林床を高密に覆うため、小型の植物や、昆虫や鳥などの動物に大きな影響を及ぼしています。また、強固な根茎と安定した植被が土壌保全の機能を果たしています。 チシマザサは、冬期に積雪に埋もれて寒さや乾燥の被害を避け、夏期はしなやかな稈が立ち上がって上部に多くの葉をつけるなど多雪環境に適応した形態的・生理的性質を持つことが知られていましたが、分布を規定する気候条件と温暖化の影響については明らかにされていませんでした。本研究では、チシマザサの分布と気候要因の関係を分布予測モデルによって明らかにし、現在と100年後の生育可能な地域の予測を行いました。 |
| 成果の内容・特徴 | チシマザサが生育する気候条件チシマザサ(別名ネマガリダケ)の分布に大きな影響を与える気候条件を明らかにするため、本州東部を対象に、分布予測モデルを構築しました(図2)。その結果、チシマザサの分布を規定する気候要因として、積雪量(最大積雪の水分当量、MSW)と暖かさの指数(成長期の暖かさの指標、WI)が特に重要であることがわかりました(図3)。チシマザサは、MSWが97.7mm(積雪深で約33cm相当)以上の地域に生育可能で、生育に適した地域(以下、適域)は、MSWが215.6mm(積雪深で約72cm相当)以上と多雪で、かつWIが32.3以上と冷涼~温暖な気候条件に限定されることがわかりました(図2)。適域は、温暖な地域(WI70.7以上)では、冷涼な地域(WI32.3~70.7)に比べてより多雪な環境に限定されました(図2)。これは、チシマザサが多雪環境に適応した特性を有しており、冷涼な地域に比べて融雪が起こりやすく積雪による保護効果が弱まる温暖な地域では、競争力が弱まるためと考えられます。このように、チシマザサの分布には、積雪と気温を組み合わせた条件が大きく影響することが、 本研究により明らかになりました。 チシマザサが生育可能な地域分布予測モデルにより、チシマザサの生育可能な地域(以下、潜在生育域)は、日本海側全域と、東北地方北部や本州中部の山岳地域で、特に適した地域は日本海側の山岳地域であることがわかりました(図4a)。また、中央・南アルプス、富士山は、チシマザサの生育に適した気候下にあるにもかかわらず実際には分布していない地域です。分布していない理由は、過去の気候変動や火山活動の影響で絶滅したことや分布拡大できなかったことが考えられます。分布予測モデルの応用温暖化の影響を明らかにするため、分布予測モデルに気象庁の開発した地域気候変化シナリオ(年平均気温2.8℃上昇)を入れて計算したところ、 チシマザサの潜在生育域の面積は半減すると予測されました。日本海側の低地や佐渡島では潜在生育域が消滅することから、温暖化に対して脆弱であることが示唆されました(図4b)。このように、分布予測モデルを用いて潜在生育域を地理的に明らかにすることにより、温暖化の影響検出を行うべき場所を適切に選定することが可能になります。詳しくは、津山幾太郎・松井哲哉・小川みふゆ・小南裕志・田中信行(2008)、GIS −理論と応用、16:11-25をご覧ください。 |
| 図表1 | ![]() |
| 図表2 | ![]() |
| 図表3 | ![]() |
| 図表4 | ![]() |
| カテゴリ | 乾燥 |
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