タイトル |
ハクサイの新病害「黄化モザイク病」(新称)の発生 |
担当機関 |
岡山農総セ |
研究期間 |
2005~2006 |
研究担当者 |
桐野菜美子
井上幸次
谷名光治
山崎雄也(大阪府大院生環)
大木 理(大阪府大院生環)
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発行年度 |
2008 |
要約 |
岡山県南部のハクサイ産地で収穫期のハクサイに発生した黄白色のモザイク症状は種子伝染性のTurnip yellow mosaic virus (TYMV)による新病害(黄化モザイク病)である。
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キーワード |
ハクサイ、Turnip yellow mosaic virus、黄化モザイク病
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背景・ねらい |
平成17年11月、岡山県南部の露地ハクサイ圃場で収穫期の葉に明瞭な黄白色のモザイク症状や奇形を生じ、結球内部にえそ症状を呈するウイルス病様の障害が発生したので、病原と伝染経路を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- ハクサイの病徴は、初期には中~上位葉に退緑斑点を多数生じ、その後葉全体が黄白化し、葉脈に沿った明瞭なモザイク症状となる。重症株では葉の一部が萎縮して株全体の生育が悪化する(図1)。また、葉脈間には紫褐色のえそ斑点が無数に現れ、えそは結球内部にまで及ぶ(図2)。
- 病斑組織の電子顕微鏡観察では、直径約28nmの球状粒子が高密度に観察され、ひも状や棒状の粒子は確認されない(図3)。
- ウイルス分離株の汁液接種によりハクサイに原病徴が再現され、接種株の罹病葉から多数の球状粒子が認められる。罹病葉から分離されるウイルスは汁液接種による判別植物の反応、酵素結合抗体法(DAS-ELISA)及びTYMVに特異的なプライマーを用いたRT-PCRにより増幅されたcDNAの塩基配列からTurnip yellow mosaic virus (TYMV)と同定される(大阪府立大学と共同,データ省略)。
- TYMV接種株から採種した種子を播種すると、0~2.2%の種子で本葉3枚展開期以降に葉の黄化モザイク症状が認められ、ハクサイでの種子伝染が確認される(表1)。
- TYMVによるハクサイの病害はこれまで国内での報告がないので、日本植物病理学会に「ハクサイ黄化モザイク病」と提案し、承認されている。
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成果の活用面・留意点 |
- 本病の圃場での発生株率は低く、畝に沿って連続した数株の発病株が散見される。
- 本病原の診断は、市販の抗血清を用いたDAS-ELISA法または電子顕微鏡による観察(DN法)で容易に判定できる。
- 本ウイルスの伝染は、海外において種子伝染の他にハムシ類による媒介、接触伝染が報告されている。
- 本ウイルスの宿主範囲はアブラナ科植物のみに限られ、ハクサイ、コマツナ、チンゲンサイ、カブ、ダイコンで全身感染が認められる。
- 罹病株は二次伝染源となるため、速やかに抜き取り土中に埋める。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
あぶらな
かぶ
こまつな
だいこん
チンゲンサイ
はくさい
播種
モザイク症
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