タイトル |
イチゴセル成型苗大量生産のための子株貯蔵及び活着促進技術 |
担当機関 |
兵庫農総セ |
研究期間 |
2006~2008 |
研究担当者 |
山本晃一
小林 保
斎藤隆雄
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発行年度 |
2008 |
要約 |
イチゴのランナーを採苗後、ただちにポリ袋に入れ、-2~0℃の冷蔵庫に入庫すると、約1か月貯蔵可能である。また、出庫後はセルトレイに挿し苗し、温室に遮光資材や冷房機を設置した活着促進用ハウスで管理することで、簡易に活着させることができる。
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キーワード |
イチゴ、セル成型苗、ランナー、冷蔵、育苗、活着
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背景・ねらい |
イチゴは、他の果菜類に比べ定植株数が多く、育苗作業が経営規模拡大のネックとなっており、育苗作業の分散化が強く望まれている。そこで、採苗したランナー子株の貯蔵技術及び貯蔵終了後のセル成型育苗における活着促進技術を開発することにより、小さなスペースでの大量生産が可能な苗生産システムを確立し、採苗・仮植作業の分散及び自由度の拡大に資する。
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成果の内容・特徴 |
- 2~3葉期にある子株を、ランナーの1節目の直下で1株ずつ切り離すことにより、小さいスペースでの貯蔵が可能で、280×400mmのポリ袋に100~120株程度詰めた場合、直方体に近い形となり、外寸524×365×h309mmのコンテナに10袋前後入れることが可能である(図1)。保存性は切り離さない場合と同等である。
- 切り離したランナーは、速やかにチャック付きポリ袋に向きを揃えて入れ、葉が上になるようにコンテナに詰めて、-2~0℃に設定した冷蔵庫に入庫する。冷蔵温度が高いほど、貯蔵中の苗の劣化が早く進行するため、凍害のない範囲でできるだけ低温での管理するのがよい(データ略)。
- 約2か月間は、葉やランナーの褐変、挿し苗後活着率低下などの障害が少なく貯蔵可能である。ただし、品種間で程度の差はあるが、貯蔵期間が長くなるほど開花期の遅れが顕著になるため、定植用苗を育成する場合冷蔵は1か月までとする(図2、図3)。
- 出庫後は、直ちにセルトレイに挿し苗する。挿し苗の際には、親株側に長く残したランナーを1cm程度残して切り、残した部分を土に挿すと、作業が簡易であり、固定資材も不要である。挿し苗後は、充分に潅水した後、遮光資材(遮光率30%程度の白寒冷紗)及び冷房機(昼25℃、夜20℃に設定)を設置した活着促進用ハウスに搬入し、フォグノズルで葉水を与えて管理する。盛夏期では約2週間程度で根鉢が形成される。
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成果の活用面・留意点 |
- 冷蔵用ランナー調製時、ポリ袋に入れる前に水につけると、保存性が低下する。
- 活着用ハウス内で管理している間、鉢土が乾燥するセルが生じるため、適宜手潅水で補う。底面給水も利用可能であるが、毎日潅水では過湿となり発根が抑制されるので、3日に1回とするなど、時期・品種等の条件によって調節する必要がある。
- 活着には個体差が生じる場合があるので、トレイの各底穴に白い根が見えるのを確認する。活着確認後は、速やかに通常の育苗管理に移行する。
- 冷房機やフォグ潅水装置がない場合は、十分な遮光を行い、こまめな潅水を行うことで活着可能であるが、根鉢形成がやや遅くなり、また鉢土が少ないので、過湿・過乾燥には十分な注意を要する。
- 共同研究機関である種苗会社による実証試験の結果、子株貯蔵技術を最大限利用することで需要集中期に必要苗数確保が十分可能との評価が得られている。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
育苗
いちご
乾燥
規模拡大
経営管理
栽培技術
凍害
品種
保存・貯蔵
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