40. ヒラタケのフェノール酸化酵素遺伝子の酵母への導入と発現

タイトル 40. ヒラタケのフェノール酸化酵素遺伝子の酵母への導入と発現
担当機関 食品総合研究所
研究期間 1996~1998
研究担当者 伊藤康博
岡本賢治(鳥取大生応工)
伏見力
柳園江
発行年度 1998
要約
リグニンのような難分解性多糖類の資源循環に寄与するフェノール酸化酵素(POase)の遺伝子をヒラタケからクローニングし、POase無活性の酵母に導入して、当該酵素蛋白質生合成と、ヒラタケと同等の活性の発現を検証した。
背景・ねらい

樹木等が合成する大量の難分解性多糖類(リグニン他)の資源循環には、担子菌、子のう菌、昆虫等の酵素が重要な役割を持ち、フェノール酸化酵素(POase)はその一環を担っている。種特異性や形態形成との関連研究も多く、定性検出や定量が容易で基礎科学的にもまた育種等の実用的にも注目され、最近は、ダイオキシン等の難分解性有毒物質分解能も報告されている。遺伝資源に富む担子菌(きのこ)の酵素利用のさきがけとして、ヒラタケPOase遺伝子のクローニングを行い、酵母への導入発現を実証した。
成果の内容・特徴
  1. 野生ヒラタケ(Pleurotus ostreatus)のプロトプラスト一核株から、各種クロマトグラフィーによってPOaseを分離精製した。N-末端アミノ酸解析と既報の担子菌類のPOase保存領域とから、遺伝子クローニングのプライマーを作成した。
  2. ヒラタケ全RNAからpolyA+ RNAを精製し、cDNAを調製した。RT-PCR法及びRACE法で得られた約1600bpのPOaseコード領域は、既報ヒラタケのPOase遺伝子とDNA配列で93.7%、アミノ酸配列で97.2%の高い相同性を示した。
  3. POase翻訳開始点と終止点の配列にEcoRI切断点を付加したプライマーを用いてPCR増幅したDNA断片をEcoRIで切り出し、酵母発現ベクターに挿入した発現ベクターを構築した(図1)。酵母Pichia pastoris(his-)にスフェロプラスト法により導入処理を行った。
  4. 組換え体を最少培地で選抜した後、サザンハイブリダイゼーションで遺伝子導入の確認を行い、グアヤコール(POase基質)添加培地に植えた(図2)。酵母元株及びPOase遺伝子を含まないベクターを導入した株は無呈色だが、
    POase組換え株は強く呈色した。組換えPOaseは他の8種の基質にもヒラタケPOaseと同等の酵素作用を示した。
  5. 液体培養上清を電気泳動分画してABTS (POase基質)で活性染色すると(図3)、酵母元株とベクター部導入株には活性が無く、POase組換え株にはヒラタケPOaseよりやや分子量の大きい位置に活性が現れ、酵素蛋白質の生合成が示された。
成果の活用面・留意点
地球上の資源循環(難分解・有毒物質等)に寄与する可能性が大きい。担子菌の酵素利用に関して、遺伝子クローニングから他生物への導入発現までの研究例として典型的。
図表1 235038-1.gif
図表2 235038-2.gif
図表3 235038-3.gif
カテゴリ 育種 遺伝資源

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