タイトル | 7.多点圧力センサによる口腔内食品物性の直接計測と評価 |
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担当機関 | 食品総合研究所 |
研究期間 | 1997~1999 |
研究担当者 |
神山かおる |
発行年度 | 1999 |
要約 | 多点シートセンサを利用して、咀嚼(そしゃく)中に口腔内に生じる圧力分布を直接計測し、食品物性の違い及び口腔内で起こる物性変化に伴う、咀嚼パターンの差異を明らかにする。 |
背景・ねらい | 長寿を誇る日本人であるが、歯の寿命は約50年と短く、よく噛めない高齢者の増加への対策として、咀嚼しやすい食品の開発は社会的重要課題である。高齢者は口腔感覚も若年者とは異なる上に、官能評価が困難な場合もあるため、客観的に口腔感覚、特に食品咀嚼中に知覚されるテクスチャー感覚を表現する必要がある。本研究では、ヒトの皮膚のように多数の感圧点をもったシートセンサを応用して、ヒトの咀嚼時に口腔内に生じる圧力分布を直接計測することを目標とする。 |
成果の内容・特徴 | 1.ニッタ社製シートセンサシステム(I-SCAN)を口腔内圧測定に応用し、センサとして0.127mmピッチで約2000個の感圧点をもつシート(図1)を用いる。 2.試料破砕時にシート上のどの位置にどんな強さの圧力を生じるかが連続計測できる。 3.機器による圧縮試験では、シート全面積にかかる力が、通常の機器測定において計測される力に対応している。 4.水分環境の異なる条件下に放置したクラッカーを、ヒトが前歯で噛み切る過程で、口腔内にかかる圧力分布を直接見ると、咬断時間、咀嚼圧、圧力を生じる位置等に個人差が大きい。 5.水分活性の低いクラッカーでは、特に咀嚼初期に圧力が時間的にも空間的にも離散してかかるが、高水分活性の試料では比較的連続している。 6.咬断中に圧力を生じたのは主として歯列上(図2)のため、中央部から歯列に沿う弓形に左右に12点を解析点として選ぶ。この24点で検出した圧力データの時間分布を位置、時間、圧力の3次元グラフにすると、咬み始めから0.3秒以内に、低水分系では鋭いピークが多数見られる(図3)。 7.この試料間による差異は、時間の経過と共に失われ、咬断後期ではほとんど差が認められない。 8.24点で検出される圧力のばらつきは、食品試料の構造上の不規則性や、テクスチャーの差異を表している。 9.咬断時における最大圧力、咬断に要した仕事量に相当すると考えられる力積は、高水分活性のクラッカーで高くなる(表1)。 以上のように、多点シートセンサにより、咀嚼中に口腔内に生じる圧力分布を計測し、食品物性の違い及び口腔内で起こる物性変化に伴う、咀嚼パターンの差異を数値化できる。 |
成果の活用面・留意点 | 1.食品物性知覚の個人差や、噛みやすさ、飲み込みやすさ等が調べられるため高齢者、障害者等向けの食品開発の基盤となる。 2.咀嚼中に変化する食品物性の特徴も評価できる。 3.ヒトの咀嚼速度に追随する高速サンプリングを達成したが、空間分解能が低い。 |
図表1 | ![]() |