長江起源水による東シナ海生態系の変調把捉に関する研究

タイトル 長江起源水による東シナ海生態系の変調把捉に関する研究
担当機関 (独)水産総合研究センター 西海区水産研究所
研究期間 2009~2011
研究担当者 秋山秀樹
長谷川徹
清本容子
岡村和麿
岡慎一郎
西内 耕
発行年度 2010
要約 長江起源水が陸棚域環境に及ぼす影響の把握を目的として海洋調査及び既存資料の解析を行った。2009年夏季にProrocentrum dentatumによるクロロフィルa亜表層極大が出現していた。P.dentatumは長江河口及び周辺沿岸域における近年の赤潮主要原因種である。中国沿岸から東シナ海陸棚域へP.dentatum群集が輸送されている可能性がある。近年の夏季長江河口沖合域表層はリン律速の生態系となる場合が多い。
背景・ねらい 近年、長江流域の開発や温暖化に伴う気候変動が東シナ海の海洋構造や低次生態系に及ぼす影響が懸念されている。中国沿岸域においては長江流域から沢山の栄養塩が急激に流入していて、それが海域の富栄養化や赤潮の頻発、貧酸素水塊の発生等の環境悪化の一因となっている。しかしながら、中国沿岸域の環境劣化が陸棚域の環境に及ぼす影響に関する知見は乏しい。そこで、本研究では海洋観測及び既存の資料解析から、陸域負荷と陸棚域環境の関連性の評価を行い、長江起源水による東シナ海海洋生態系の変調の有無を検討する。
成果の内容・特徴
  1. 長江起源水が分布すると考えられる塩分31以下の海域で、主にP.dentatumにより構成され濃度が50μg/Lを超えるChl.aの亜表層極大の出現を確認した。また、夏季の東シナ海大陸棚域では近年頻繁にP.dentatumが出現していることを明らかにした(図1,表1)。P.dentatumは中国沿岸の近年の赤潮原因種であることから、中国沿岸から東シナ海陸棚域へ本種群集が輸送されている可能性が示唆された(図2)。
  2. P.dentatum出現域の環境条件を把握し、長江河口沖合域における栄養塩の経年変動を調べた。夏季の長江河口沖合域表層は栄養塩が枯渇しやすく、潜在的にはリン律速の生態系となりやすいこと(図3)、1990年代前半にリン制限の傾向が強まった可能性等が示唆されている。P.dentatumは日周鉛直移動等の遊泳能力を持ち、DIP(溶存無機態リン)だけでなくDOP(溶存有機態リン)をリン源として利用できる。このことが、大陸棚で群集を維持し、かつ遠方まで輸送される要因と考えられる。また、特定の条件が整った場合のみにP.dentatumが巨大な亜表層極大を形成であきるものと考えられる。
成果の活用面・留意点
  • 陸域からの汚濁負荷削減による効果的な海洋環境・生態系サービスの持続性確保のための環境政策を提案するに当たり、それらの効果を事前に予測・検証するための資料となる。
  • 有害生物による漁業被害の防止・軽減に万全を期すため、東シナ海生態系の変調把握に基づく環境保全対策の検討や東アジア海域における国際的なモニタリング・ネットワークの構築に貢献する。
  • 本研究は国立環境研究所・立正大学・名古屋大学との共同研究である。
図表1 235132-1.png
図表2 235132-2.png
図表3 235132-3.png
図表4 235132-4.png
カテゴリ モニタリング 輸送

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