台風被害による森林生態系のCO2放出量の増加

タイトル 台風被害による森林生態系のCO2放出量の増加
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 宇都木 玄
山野井 克己
溝口 康子
阪田 匡司
飛田 博順
上村 章
北村 兼三
発行年度 2010
要約 台風被害をうけた落葉広葉樹林において、風害以前は光合成によるCO2吸収量が土壌や枯死木によるCO2放出量を上回っていました。しかし風害後は両者が逆転し、森林生態系としてCO2の放出に変化することが判りました。
背景・ねらい 地球温暖化緩和策として森林による二酸化炭素(CO2)吸収機能が期待されていますが、森林が台風などの自然攪乱を受けた場合、攪乱前と同様なCO2吸収機能を発揮できるでしょうか?地球温暖化にともなう台風の大型化が予想されており、森林のCO2収支(吸収量と放出量のバランス)を評価するうえで、台風被害の影響を無視できません。そこで台風被害を受ける前後の森林生態系(植物・土壌を含んだ森林全体)のCO2収支を計算したところ、風害前は光合成による吸収量が土壌や枯死木による放出量を上回っていましたが(全体として吸収)、風害後は両者が逆転し、森林生態系としてCO2の放出に変化することが明らかとなりました。
成果の内容・特徴

森林植物の光合成によるCO2吸収

2004年9月の台風18号によって、森林総合研究所北海道支所の実験林は大きな風害を受けました。特にシラカンバやミズナラを中心とした落葉広葉樹林の約9%が倒壊しました(図1)。実験林では風害以前の2000年から、タワーを建てて森林生態系のCO2収支を観測してきましたが、台風で壊れたタワーを翌年には再建し、観測を再開しました。森林は光合成によってCO2を吸収しますが(総光合成量)、その値は風害前後でそれぞれ年間48トン/ha及び46トン/haであり、両者に大きな差はありませんでした。風害後、ササ群落が著しく成長してきました (図2)。風害前のササ群落の現存量は、乾燥重量で5~8トン/haでしたが、風害5年後の明るい場所では40トン/haを超えていました。計算の結果、ササ群落の光合成量が、倒れた樹木により失われた光合成の減少量を補っている事がわかりました。

生きている樹木からのCO2放出

風害後に生き残った樹木の成長量は、風害前と同じでした。よって風害前後で、幹枝の呼吸によるCO2放出量は大きく変化していないと考えられます。

枯死木からのCO2放出

台風による枯死木の容積密度の変化を調べ(図3)、CO2の放出量を計算しました。樹種によって放出量は異なりますが、平均すると5年間で枯死木中に含まれる炭素の19%が放出されました。この値は、生きている樹木の幹枝の呼吸によるCO2放出量の1.6倍に相当します。

森林土壌からのCO2放出

風害後の森林土壌からの年間CO2放出量は、風害前に比べて1.3倍大きくなりました。また風害前後で植物の根呼吸によるCO2放出量は変化しませんでしたが、土壌微生物によるCO2放出量が大きくなりました。

台風被害後の森林生態系はCO2の放出源?

風害前は樹木の総光合成量が、呼吸などによるCO2放出量よりも多く、年間9.2トン/haのCO2を森林生態系に吸収していました。一方風害後は倒れた樹木や森林土壌からのCO2放出量が増加し、森林生態系から年間約6.2トン/haのCO2が放出されました。つまり台風被害は森林生態系のCO2収支を大きく変えてしまいました (図4)。今後も被害の進行や回復によってCO2収支がどのように変化するのか、精度の高い観測を継続する必要があります。

本研究は日本学術振興会科学研究費補助金 (19380095)による成果です。
図表1 235181-1.jpg
図表2 235181-2.jpg
図表3 235181-3.jpg
図表4 235181-4.gif
カテゴリ 乾燥

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