| タイトル | たくさんのイオウを捕まえて放さない火山灰土 |
|---|---|
| 担当機関 | (独)森林総合研究所 |
| 研究期間 | |
| 研究担当者 |
谷川 東子 今矢 明宏 |
| 発行年度 | 2010 |
| 要約 | 日本を広く覆っている火山灰土は欧米の土壌の数倍ものイオウを貯めており、そのイオウを捕まえる力は火山灰起源の成分に由来していることが分かりました。 |
| 背景・ねらい | 産業革命以降、イオウを含む化石燃料を消費することによって大量のイオウが大気に放出されてきました。イオウを溶かし込んだ酸性の雨は、土壌の養分を洗い流し、土壌鉱物の風化を加速させます。なぜなら土壌に蓄えきれなかったイオウが水系へ流亡するとき、イオウは硫酸イオン(SO42-)というマイナスの電気を帯びた形態をしているため、電気的中性を保つようにプラスの電気を帯びた養分(カルシウムなど)や有害なアルミニウムを伴うためです(図1)。「土壌の酸性化」とは、土壌pHの低下だけでなく、このような養分やアルミニウムが溶脱する現象を意味します。欧米では「土壌の酸性化」が原因とみられる森林衰退がいくつも報告されてきました。一方、わが国にも欧米と同じくらいの量のイオウが雨に含まれて降っていますが、深刻な土壌の酸性化は報告されていません。日本の森林土壌の多くは火山灰を含んでいます。そこで火山灰土にイオウの移動を止める力があるのではないかと考え、イオウが火山灰土に保持される仕組みや保持されている量を調べました。 |
| 成果の内容・特徴 | 火山灰土には多量のイオウが含まれていた土壌に保持されるイオウにはいくつかの仕組みがあり、その中には「土の粒の中に侵入している硫酸イオンの形のイオウ(図2c)」と「“金属と結合して分解しにくい有機物”の中に入っているイオウ」があります。この2つのイオウ成分を測定する方法を考案し、関東地方の森林の火山灰土でそれらの量を調べたところ、保持されていたイオウの約1割は土の粒の中に侵入している硫酸イオン、2~3割は金属と結合しているイオウであることが分かりました。また、土壌中のイオウ保持量は土壌1kgあたり0.54~2.24gと、欧米の森林土壌のイオウ含量(通常、数十~数百mg程度)に比べはるかに多いことが分かりました。林地面積1ha当たり(表層から1m深まで)に蓄積しているイオウ量に換算すると、酸性雨による森林被害が最も早く見つかったドイツでは1~4トン程度であるのに対し、本研究で対象とした関東地方の森林土壌では最大9トンにもなりました(図3)。どんな成分がイオウを捕えるのか?火山灰土には鉱物が風化してできた鉄やアルミニウムなどの酸化物(遊離酸化物)がたくさん含まれています。そこでイオウの蓄積量と遊離酸化物の量との関係を解析したところ、イオウの蓄積量は遊離酸化物の量に依存することがわかりました(図4)。従って、遊離酸化物を多量に含む日本の火山灰土は、イオウを保持する力が強く、酸性の雨の影響を弱めていると推察されました。今後もイオウの移動は止め続けられる?本研究から、わが国に広く分布する火山灰性土壌のイオウの蓄積量は世界有数であり、蓄積していたイオウの多くは、土の中で長く安定して存在できる仕組みをもつことが明らかになりました。ただし、火山の分布は地域による偏りがあるため、火山灰の降下量が少ない地域もあります。このような地域の土壌は、遊離酸化物を少ししか含まないので、イオウの降ってくる量が増加すると土で緩和されず、養分やアルミニウムが流出して土壌の酸性化が起きる危険性があります。本研究の結果は、土壌の遊離酸化物量を指標として用いることで、イオウを含む酸性の雨による土壌や渓流水の酸性化予測が可能になることを示しています。本研究は「予算区分:科研費、課題名:森林土壌におけるエステル硫酸態イオウの保持機構の解明」による成果です。 |
| 図表1 | ![]() |
| 図表2 | ![]() |
| 図表3 | ![]() |
| 図表4 | ![]() |
| カテゴリ | シカ |
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