タイトル | 木材表面の微小変形(ひずみ)をとらえて、スギ「心持ち材」を割れなく乾燥する方法 |
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担当機関 | (独)森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
小林 功 |
発行年度 | 2011 |
要約 | スギ心持ち材を割れることなく乾燥するため、乾燥処理中の木材表面の微小な変形(ひずみ)をとらえ、材質に合った適切な乾燥処理時間を自動判定する方法を考案しました。 |
背景・ねらい | 木材を乾燥し始めるとまず表面が乾いて縮もうとしますが、まだ乾いていない内部の細胞が表面の縮もうとする力を邪魔するので、表面の細胞は相対的に年輪に沿った方向(横方向)に引っ張られて、割れることがあります(写真)。特に心持ち材*は割れやすく、これを防ぐため乾燥工程の前半で温度120℃の熱処理を行います。木材は樹種や品種、時には産地によっても性質が異なるので、処理時間を材の性質に合わせて決めることが効率的な乾燥につながります。そのためには乾燥試験が必要ですが、製材工場では困難な場合が多いのが現状です。そこで、適切な処理時間を乾燥試験を行わずに決定する方法を考案しました。これによって、より高品質な製材品の生産が可能になります。 *心持ち材 断面の中に髄と呼ばれる樹木の中心、すなわち年輪の中心を含む製材 。 |
成果の内容・特徴 | 背景と目的木材は変形や腐れなどの問題が起きないよう乾かしてから使いますが、木造住宅に使われる「心持ち材」は乾燥している間に割れやすいので(写真)、割れ防止の熱処理を行うのが一般的です。材の特性に合わせた適切な処理時間を決めるためには乾燥試験が必要ですが、失敗したときの経済的なリスクが大きいため製材工場で試験を行うことは多くの場合困難です。そこで、乾燥操作の中で適切な処理時間を判定する方法を開発しました。処理時間の考え方スギ心持ち材を用いて行った乾燥試験で、心持ち材の割れが少なく乾燥できた乾燥条件を図1に示します。木材を高温(95℃)で軟らかくしてから急激に湿度を下げ、温度を上げるのが特徴です(図1、熱処理工程)。熱処理時間は短すぎると表面が割れ、長すぎると内部が割れるため丁度よい処理時間の検討が必要です。この処理時間とは、材内部が収縮を始めて少し経った頃と考えられ、材表面が割れる危険性も内部に割れが生じる危険性も小さくなる時期です。研究の結果、このタイミングを材表面の端部と中央部のひずみの挙動から判定できることが明らかになりました。 乾燥試験方法図1で行った乾燥試験と同じ樹種、品種、産地のスギ材を用いて乾燥操作中のひずみを調べた結果を図2に示します。図3に示すような2つのひずみ計を心持ち材に取り付けて試験を行いました。2つのひずみが逆転した時点(約38時間)が、図1の割れなかったスケジュールの熱処理工程終了時期と合致しています。内部が縮み始めて少し時間が経つと、表面の中央部が内部の収縮に影響されて本来よりも大きく縮み始め、端部より大きくひずむためと考えられます。したがって、ひずみ計を木材に取り付けて乾燥操作を行えば、その材の適切な熱処理時間が乾燥操作中にわかります。改めて乾燥試験を行う必要がないため、乾燥試験の失敗による経済的リスクを負わずに、表面割れや内部割れの少ない心持ち材の乾燥がスムーズに行えるようになります。この方法によって、製材工場における乾燥操作中に地元材の特性に合った熱処理時間を決定でき、内部割れや表面割れの少ない、良質な乾燥材の生産につながることが期待できます。 なお、この成果は特許出願中(特願 2010-195394)です。詳しい研究内容については、「第61回日本木材学会大会要旨集 (CD-ROM), E18-09-1400」をご覧下さい。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
カテゴリ | 乾燥 品種 |