根粒菌・菌根菌の共生において共通共生遺伝子CCaMKは中核的機能を果たす

タイトル 根粒菌・菌根菌の共生において共通共生遺伝子CCaMKは中核的機能を果たす
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究期間 2007~2011
研究担当者 今泉温子
下田宜司
林晃之
馬場真里
河内宏
韓路
山崎俊正
鈴木倫太郎
武田直也
前川隆紀
林誠
発行年度 2011
要約 根粒菌・菌根菌の共生に関与する分子メカニズムを明らかにするために、共通共生遺伝子CCaMKの機能を検証した。CCaMKとカルモジュリンの結合は根粒菌の共生にのみ必要であり、また菌根菌感染に重要な細胞内構造の変化がCCaMKによって誘導された。
キーワード 根粒菌、菌根菌、窒素固定、リン酸吸収、ミヤコグサ、共通共生遺伝子
背景・ねらい 根粒菌はダイズなどマメ科植物の根に感染して根粒形成を誘導し、根粒内で大気中の窒素をアンモニアに固定して植物に供給する。このことから、マメ科植物は窒素栄養の乏しい土壌環境でも生育が可能である。一方、菌根菌は陸上植物の8割程度の種と共生することができ、感染した植物の根から土壌中に展開した菌糸で、植物の生育に必要なリン酸などの栄養分や水分を吸収して植物に供給する。これらの共生は、共通共生遺伝子と呼ばれる一連の宿主遺伝子により制御されている。このような有用土壌微生物と植物との共生を農業に活用するためには、共生の分子メカニズムを明らかにし、共生の人為的な調節を可能にすることが望ましい。そこで、共通共生遺伝子で中核的役割を果たしている遺伝子を同定し、その機能を検証した。
成果の内容・特徴
  1. 共生に対する植物の細胞生理学的応答として、細胞核カルシウムイオンの周期的な濃度変動(カルシウムスパイキング)が知られている。共通共生遺伝子は、カルシウムスパイキングの誘導に必要な「上流遺伝子」と、誘導には関与しない「下流遺伝子」に区別できる。
  2. 「下流遺伝子」の1つ、CCaMKは、その機能獲得型の変異により、根粒菌が感染しなくとも根粒を形成することができる。そこで、CCaMK遺伝子の機能獲得型変異を、他の共通共生遺伝子の機能喪失型変異と組み合わせることで、共生におけるそれぞれの遺伝子の役割を検証した。その結果、「上流遺伝子」はCCaMKの活性化のみに働き、共通共生遺伝子の機能はCCaMKに集約化されていることが明らかとなった。
  3. CCaMKはタンパク質キナーゼ部位、カルモジュリン結合部位、カルシウム結合部位によって構成されている。CCaMKにカルモジュリン結合能力を失わせる変異を与えると、菌根菌は感染できるが、根粒菌は感染できなくなることから、CCaMKとカルモジュリンの結合は根粒菌の共生にのみ必要であると考えられた(図1)。
  4. そこで、菌根菌の共生におけるCCaMKの働きを検証した。菌根菌が感染する際に必要な宿主遺伝子の発現誘導には、CCaMKが細胞核に存在することが必要であった(図2)。これはCCaMKがカルシウムスパイキングの受容体であることを裏付けている。また、菌根菌の感染によって誘導される細胞内構造である侵入前装置(PPA)は菌糸の細胞内侵入に重要であるが、PPAの形成にはCCaMK が必要十分であることを明らかにした。
成果の活用面・留意点
  1. これまでの研究から共通共生遺伝子におけるCCaMKの重要性は提唱されていたが、上記の研究により、それが実証された。
  2. 機能獲得型CCaMKを利用することで、宿主遺伝子の発現を人為的に調節することが可能になった。したがって、CCaMKの下流で機能する共生遺伝子の同定が容易になった。
  3. 共生遺伝子の全容を明らかにすることで、根粒菌・菌根菌の有効利用が期待できる。
図表1 235256-1.jpg
図表2 235256-2.jpg
研究内容 http://www.nias.affrc.go.jp/seika/nias/h23/nias02307.htm
カテゴリ 大豆 土壌環境

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