タイトル | 「安全・安心な乾燥材の生産・利用マニュアル」が完成 |
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担当機関 | (独)森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
加藤 英雄 軽部 正彦 長尾 博文 井道 裕史 三浦 祥子 小林 功 |
発行年度 | 2012 |
要約 | 構造用の心持ち正角材を、内部割れの発生が極力少なく、また強度面での問題が生じないように人工乾燥するための「安全・安心な乾燥材の生産・利用マニュアル」が完成しました。 |
背景・ねらい | 近年普及している高温セット法*を用いた乾燥方法では、乾燥時間を短縮し、乾燥不足を極力減らそうとしてつい不適切な乾燥スケジュールを採用してしまうことがあります。このような場合、製品に内部割れが多く発生することがあります。 そこで、乾燥スケジュールや内部割れと強度との関係を実験的に明らかにするとともに、これまでに得られた成果を集大成して、内部割れが少なく、強度面でも問題が生じない「推奨乾燥スケジュール」を提案し、「安全・安心な乾燥材の生産・利用マニュアル」を作成しました。 このマニュアルでは、内部割れの発生状況、内部割れの評価法、生産性向上のための技術、乾燥に関するQandAや用語の解説も併せて掲載しています。 *高温セット法 十分に水を含んだ心持ち材を、乾球温度120℃程度、湿球温度90℃程度で数時間から20数時間行う処理のこと。 |
成果の内容・特徴 | はじめに構造用の心持ち正角材の材面割れを抑える乾燥方法として普及している高温セット法では、温湿度管理が不適切な場合、外観からは分からない内部割れが発生することがあり、それに伴う強度低下も懸念されています。このため、内部割れの発生を防ぐ乾燥スケジュールの開発を目的に、石川県林業試験場を中核機関とし、森林総合研究所を含む全国13の公設研究機関が試験研究に取り組みました。不適切な乾燥スケジュール(乾かしすぎ)が招く強度低下のリスク木材の様々な強度特性の中でもせん断強度が内部割れの影響を受けやすいと考えられたため、乾かしすぎにより意図的に内部割れを発生させてせん断試験を実施したところ、内部割れが長くなるに従ってせん断強度が低下することがわかりました。この傾向は、スギ、ヒノキ、トドマツで認められましたが、樹種により低下の割合は異なりました。また、乾かしすぎによってせん断強度以外の強度低下も認められる場合がありました。 このことから、心持ち正角材の乾燥に高温セット法を用いる場合、内部割れが少なく、強度面でも問題が生じない乾燥スケジュールが重要であることが改めて確認できました。 内部割れが少なく、強度面でも問題が生じない乾燥スケジュールの開発内部割れが多く発生したり、強度が低下したりするのは、高温セット処理の時間が長過ぎたり、高温セット処理後の乾球温度の設定が高すぎたりするのが主な原因であることが、乾燥試験と強度試験でわかりました。そこで、高温セット処理の条件とその後の乾燥スケジュールの組み合わせ方によって、内部割れの発生状況や強度がどう変わるのかを検討しました。そして、この組み合わせ方の中から、(1)強度低下が少ない、(2)内部割れが少ない、(3)含水率が20%以下となる乾燥スケジュールを推奨条件とした実用的な乾燥スケジュールを、スギ、カラマツ、ヒノキ、アカマツ、トドマツ、ヒバの樹種・断面別に取りまとめるとともに(図1)、強度面でも問題がないことを実験で確認しました。 こうして得られた一連の結果を用いて、「安全・安心な乾燥材の生産・利用マニュアル」を作成しました。なお、作成にあたっては、単に試験結果を羅列するのではなく、「見やすく、分かりやすい」を心がけました。また、内部割れの発生状況、内部割れの評価法、生産性向上のための技術、乾燥に関するQandAや用語の解説も併せて掲載しました。 マニュアルは、次のURLから無償でダウンロードできます。 http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/various/index.html 本成果は、農林水産省「新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業」の課題「21029 安全・安心な乾燥材生産技術の開発(中核機関:石川県林業試験場)」によるものです。 |
図表1 | ![]() |
研究内容 | http://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2012/documents/p16-17.pdf |
カテゴリ | 乾燥 評価法 |