タイトル |
環形動物を用いた海洋底質浄化法の検討 |
担当機関 |
(独)水産総合研究センター 瀬戸内海区水産研究所 |
研究期間 |
2010~2011 |
研究担当者 |
伊藤克敏
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発行年度 |
2011 |
要約 |
環形動物の有する海洋底質浄化機構解明を目的として、生息域の異なる環形動物の有機汚濁物質代謝酵素活性および有害化学物質分解能を検討した。その結果、環形動物は生息域に適応した有機汚濁物質代謝酵素活性を持ち、さらに、極めて高い有害化学物質代謝能力を有することが明らかとなった。
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背景・ねらい |
ゴカイなどの環形動物は、他の底生生物と比較して汚染環境に対する耐性が高く、底質の攪拌などを通じ環境を浄化する能力を持ち、沿岸海洋生態系の保全において重要な役割を担うと考えられている。しかしながら、環形動物の環境修復機構には依然未解明な点が多い。そこで、海洋生態系の保全に繋がる、底生動物を用いたバイオレメディエーション技術を確立するため、環形動物が有する汚染物質代謝能の解明を試みた。
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成果の内容・特徴 |
生息域の異なる環形動物の有機汚濁物質代謝酵素活性を検討した結果、残餌や養殖魚の排泄物由来のタンパク質が蓄積する養殖場下に生息するイトゴカイ(図1a)は、高いタンパク質分解酵素活性を有し、また植物由来の有機物が蓄積する河口域に生息するスナイソゴカイ(図1b)は、セルロースを分解するセルラーゼ活性が高いことが明らかとなった(図2)。次に、有害化学物質分解能について、海洋底質汚染物質として知られる1-ニトロナフタレン(1-NN)を被験物質として検討した。2種の環形動物を1-NN添加海水で飼育した結果、3日後のイソゴカイ(図1c)及びイトミミズ(図1d)飼育水中1-NN濃度は、試験開始時の1.4mg/Lから、それぞれ0.56mg/L及び0.012mg/Lまで減衰した(図3)。さらに、生体中濃度は、それぞれ38mg/kg及び0.094mg/kgであり、これらから算出した試験系内全体の1-NN減衰率はイソゴカイ区が40%及びイトミミズ区が99%であった(図4)。以上の結果から、環形動物は生息域に適応した有機汚濁物質代謝酵素活性を持ち、さらに、高い有害化学物質(1-NN)代謝能力を有することが明らかとなった。
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成果の活用面・留意点 |
- 各種汚染底質に適した環形動物を用いた効率的な底質浄化が可能となる。
- 種の攪乱を防ぐために、浄化対象地に生息している底生生物を用いる必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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研究内容 |
http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=3410&YEAR=2011
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カテゴリ |
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