タイトル |
イタリアンライグラスサイレージ由来の新規乳酸菌株の同定 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所 |
研究期間 |
2010~2011 |
研究担当者 |
遠野雅徳
小林寿美
野村 将
北原真樹
大熊盛也
上垣隆一
蔡 義民
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発行年度 |
2011 |
要約 |
迅速PCR法により同定されるイタリアンライグラスサイレージ由来乳酸菌は、様々な至適生育温度等の表現型を示し、多様な発酵環境に対応する飼料添加剤への応用が期待される。本分離株の一部は、公的微生物保存機関に移管されており広く利用可能である。
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キーワード |
国産自給飼料、サイレージ、乳酸菌
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背景・ねらい |
良質なサイレージ発酵に有効な特徴を有する乳酸菌を探索するため、イタリアンライグラス(Lolium multiflorum Lam.)サイレージより分離された23菌株の乳酸菌の表現型および遺伝子型について、生理生化学的性状解析、16S rDNAシークエンス法、迅速PCR法およびmultiplex PCR法により検討する。本研究において正確に系統分類された国産自給飼料由来乳酸菌株の一部を公的微生物保存機関に移管することにより、学術研究上有益なバイオリソースとして広く提供することを目指す。
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成果の内容・特徴 |
- コロニーダイレクトベースの迅速PCR法を用いた16S rDNA配列に基づく系統分類と、multiplex PCR法による亜種判定により、分離乳酸菌23株は、Lactococcus lactis subsp. lactis, Lactobacillus (L.) brevis, L. coryniformis subsp. torquens, L. curvatus, L. plantarum subsp. plantarum, L. sakei subsp. carnosus, Leuconostoc mesenteroides subsp. dextranicumおよびPediococcus parvulusと同定される(表1)。
- 分離乳酸菌23株の16S rDNA配列は、三大国際DNAデータバンク(DDBJ/EMBL/GenBank)に登録しており(登録番号AB601158-AB601180)、各国際DNAデータバンクウェブサイトから誰でも閲覧可能である。
- 本研究は、イタリアンライグラスサイレージ中におけるL. coryniformis subsp. torquensおよびLeuconostoc mesenteroides subsp. dextranicumの存在を明らかにする初めての報告である(表1)。
- 分離乳酸菌株の至適生育温度およびpH等の表現型は、同一の菌種・亜種間でも異なることが明らかとなり、多様なサイレージ発酵環境に対応する飼料添加剤として各分離株を有効利用できる可能性が示唆される(表1)。
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成果の活用面・留意点 |
- 国産自給飼料由来乳酸菌20株(微生物番号:MAFF516219~516238)は、専門機関である独立行政法人農業生物資源研究所微生物遺伝資源部門に移管されており、学術研究を目的として、公立試験研究機関および民間企業内研究者等により利用可能である。
- 移管株は、In vitro実験系において、市販の飼料添加用乳酸菌製剤に使用されている乳酸菌株と同等の生理生化学的性状(糖利用性、乳酸産生能及び至適増殖温度等)を示すが、実際の発酵飼料調製における本菌株の性能を担保するものではない。
- 移管株の菌種・亜種を同定済であるため、系統分類学的研究における基準株や新規分離株との比較研究に極めて有用である。
- 迅速PCR法は、微量サンプルから解析可能であり、貴重微生物サンプルの解析に有用である。また、微生物由来の核酸抽出が不要であると同時に、PCR稼働時間が従来の約1/3であることから、解析費用と時間の大幅な削減が可能となる。
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図表1 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nilgs/2011/120c6_10_08.html
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カテゴリ |
イタリアンライグラス
遺伝資源
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