タイトル |
サイレージからは未分離であった乳酸菌株の新発見 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所 |
研究期間 |
2010~2011 |
研究担当者 |
遠野雅徳
小林寿美
野村 将
上垣隆一
蔡 義民
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発行年度 |
2011 |
要約 |
チモシー・オーチャードグラス混播牧草サイレージ由来乳酸菌には、7菌属10菌種以上の多様性が認められ、これまで植物性素材の飼料作物から未分離の乳酸菌が見出される。本分離株の一部を公的微生物保存機関に寄託することにより、広く利用可能となる。
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キーワード |
国産自給飼料、サイレージ、乳酸菌
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背景・ねらい |
サイレージ発酵過程における微生物発酵メカニズムの解明と分離微生物の高度有効利用を目指し、チモシー(Phleum pratense L.)・オーチャードグラス(Dactylis glomerata L.)混播牧草サイレージより分離される65菌株の乳酸菌の表現型および遺伝子型について検討する。分離乳酸菌株の一部を公的微生物保存機関に寄託することにより、産業・学術研究上有益なバイオリソースとして活用することを目指す。
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成果の内容・特徴 |
- 16S rDNA配列に基づく系統分類と、multiplex PCR法による亜種判定により、分離乳酸菌65株は、Lactobacillus (L.) coryniformis subsp. coryniformis、L. coryniformis subsp. torquens、L. paraplantarum、L. plantarum subsp. argentoratensis、L. plantarum subsp. plantarum、Leuconostoc pseudomesenteroides、Pediococcus (P.) acidilactici、P. pentosaceus、Weissella (W.) paramesenteroides、Carnobacterium (C.) divergens、L. acidipiscis、L. sakei subsp. carnosus、Lactococcus (Lc.) garvieae、Lc. lactis subsp. cremoris、Enterococcus (E.) gallinarumおよびW. hellenicaと同定される(図1)。
- 分離乳酸菌65株の16S rDNA配列は、三大国際DNAデータバンク(DDBJ/EMBL/GenBank)に登録しており(登録番号AB598934-AB598993およびAB600196-AB600200)、各国際DNAデータバンクウェブサイトから閲覧可能である。
- 本研究は、植物性素材である飼料作物中におけるC. divergens、L. acidipiscis、L. sakei subsp. carnosus、Lc. garvieae、Lc. lactis subsp. cremoris、E. gallinarumおよびW. hellenicaの存在を明らかにする初めての報告である(図1)。
- 幾つかの分離株は,幅広い糖資化性を示し、様々な至適生育温度およびpH条件下で増殖することが認められ(データ未掲載)、高い増殖能をもつことが示唆される。以上のことから、飼料添加剤としての有効利用が期待できる。
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成果の活用面・留意点 |
- 本研究で分離した乳酸菌株の一部を(独)理化学研究所バイオリソースセンター微生物材料開発室に寄託することにより(JCM18188および18189株として公開・普及開始)、行政・普及機関、公立試験研究機関、生産者、民間企業を問わず誰でも利用可能となる。
- 寄託株は、In vitro実験系において、市販の飼料添加用乳酸菌製剤に使用されている乳酸菌株と同等の生理生化学的性状(糖利用性、乳酸産生能及び至適増殖温度等)を示すが、実際の発酵飼料調製における本菌株の性能を担保するものではない。
- 移管株の菌種・亜種を同定済であるため、系統分類学的研究における基準株や新規分離株との比較研究に極めて有用である。
- 今後、サイレージ素材を新たな分離源とする乳酸菌株の詳細な検討により、微生物学的観点からサイレージ発酵過程における微生物発酵機構の解明が期待できる。
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図表1 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nilgs/2011/120c6_10_09.html
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カテゴリ |
飼料作物
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