タイトル |
ラマン分光による牛脂および豚脂の迅速判別法 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所 |
研究期間 |
2007~2011 |
研究担当者 |
本山三知代
佐々木啓介
安藤正浩
濵口宏夫
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発行年度 |
2011 |
要約 |
1417cm-1ラマンバンドの有無により、牛脂および豚脂を短時間で判別できる。
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キーワード |
トリアシルグリセロール、冷却、結晶多形、脂肪の質、食肉
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背景・ねらい |
牛脂と豚脂の判別や混合割合の推定には、DNA鑑別や脂肪酸組成分析等の方法が用いられて来たが、どの方法も時間がかかるという短所がある。ラマンスペクトルは脂肪の結晶多形の違いを鋭敏に反映し、1417cm-1にはβ’型結晶多形に特有なバンドがある。牛脂と豚脂はトリアシルグリセロール組成に差異があり、β’型結晶多形の形成に相違が生じると考えられる。そこで、ラマン分光を用いた牛脂と豚脂の迅速で簡易な判別手法を開発する。
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成果の内容・特徴 |
- 様々な温度で結晶化させた牛脂と豚脂において、1417cm-1に見られるラマンバンドの強度は、結晶化温度に依存して変化する(図1)。
- 牛脂と豚脂の1417cm-1ラマンバンド強度に明瞭な差が得られる結晶化温度は0℃(氷水の温度)である(図1)。
- 市場に流通する牛脂7点および豚脂8点の融液を0℃まで急冷し結晶化すると、1417cm-1ラマンバンドは豚脂で検出される一方、牛脂では検出されず(図2)、このバンドの有無により両者が判別できる。
- 結晶化およびスペクトル測定に要する時間は10分以内である。
- 牛脂と豚脂の混合試料における1417cm-1ラマンバンドの強度は、豚脂の混合割合が60%より多い場合は濃度依存的に増加するが、50%以下の場合にはバンドは検出されない(図3)。本法を混合油脂に応用することで、牛脂と豚脂のどちらが主体であるか、大まかな判定が可能である。
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成果の活用面・留意点 |
- 油脂試料が牛脂と豚脂のみで構成されることが明らかである場合に、その油脂が牛脂を主体とするものか、豚脂を主体とするものかを判別することが出来る。ただし、その混合割合を正確に推定するためには、混合油脂における本バンドの検出濃度下限について、さらに検証が必要である。
- 牛豚の挽肉や成型肉に本法を応用する場合は、油脂の抽出処理が必要になる。また、含まれる脂肪について牛と豚のどちらが多いかを判定するものであり、赤肉に占める牛豚の割合は判定できない。
- 酸化や分解により劣化した油脂では、トリアシルグリセロール組成が大きく変化していると考えられるため、本法の適用には別途検討が必要である。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nilgs/2011/330a0_10_04.html
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カテゴリ |
豚
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