堆肥の継続的な施用は飼料用トウモロコシの放射性セシウム低減に有効である

タイトル 堆肥の継続的な施用は飼料用トウモロコシの放射性セシウム低減に有効である
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所
研究期間 2011~2011
研究担当者 原田久富美
菅野 勉
須永義人
川地太兵
森田聡一郎
佐藤節郎
増山秀人
佐田竜一
九石寛之
前田綾子
発行年度 2011
要約 堆肥を1作あたり3t/10a程度継続的に施用することにより、土壌からの飼料用トウモロコシへの放射性セシウムの移行を、施用しない場合に比べ40%程度抑制できる。原発事故当年において、土壌からトウモロコシへの放射性セシウムの移行係数はIAEAの技術レポートの値とほぼ同じレベルであった。
キーワード 飼料用トウモロコシ、放射性セシウム、堆肥、カリ施肥、移行係数
背景・ねらい 2011年3月に発生した東京電力福島第一原子力発電所事故以降、東日本の広い範囲で放射性セシウム(Cs)が飼料畑や牧草地の土壌に沈着し、土壌から飼料作物への放射性Csの移行抑制が重要な課題となっている。17都県で実施されたモニタリング調査において、飼料用トウモロコシは、永年牧草に比べて放射性Cs濃度が低く、放射性Csの影響を受けにくい飼料作物として期待が高い。本研究では、飼料用トウモロコシ栽培における、土壌から作物体への放射性Csの移行と移行抑制のための養分管理条件を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 7地点における土壌から黄熟期の飼料用トウモロコシへの移行係数の幾何平均値は0.045であり、IAEA技術レポート(Technical reports series No.472,2010年)とほぼ同じレベルであった(表1)。2011年に17都県で実施されたモニタリング調査において、飼料用トウモロコシの放射性Cs濃度が低い傾向を示したのは移行係数が小さいためと考えられる。また、出穂期の移行係数は乳熟期、黄熟期より50%程度高い(図表省略)。
  2. 牛ふん堆肥を1作あたり3t/10a以上、継続的に施用してきた圃場(土壌の交換性K2Oが50mg/100g乾土程度以上)では、堆肥を施用しない場合に比べて、黄熟期トウモロコシの放射性Cs濃度が40%程度低くなる(図1)。堆肥施用による低減効果は、カリ肥料をK2Oとして10kg/10a施用の有無に関係なく得られる。
  3. 以上のことから、施肥基準等で推奨されている1作あたり3t/10a程度の堆肥を継続的に施用し、トウモロコシを栽培することが、放射性Cs濃度の低い自給飼料を生産するために有効な方法である。
  4. これまで公表された論文等の調査結果では、飼料畑土壌の交換性K2Oは十分に高い場合が多いが、土壌のカリ肥沃度が低い場合には、カリ肥料の施用により放射性Csの移行を25%程度抑制できる(図2)。
成果の活用面・留意点
  1. 普及対象 県及び農協等、指導機関の関係者及び生産者に参考となる情報である。
  2. 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等 原発事故により土壌に放射性Csが沈着した南東北~関東の飼料畑を対象として、関係8県のトウモロコシ栽培面積約2万ha程度に適用可能である。
  3. その他 圃場の管理履歴や堆肥成分が不明な場合には、土壌診断や堆肥分析を行うことが望ましい。また、移行係数の経年的な変化に留意する必要がある。なお、堆肥中放射性Csの暫定許容値は、畜産農家が自らの飼料畑に還元する等の例外を除き、400Bq/kg(製品重量)である。堆肥やカリ肥料の過剰な投入は、飼料用トウモロコシのミネラルバランスの悪化や硝酸性窒素の蓄積の他、地下水汚染を招く場合があることに留意する。
図表1 235668-1.gif
図表2 235668-2.gif
図表3 235668-3.gif
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nilgs/2011/a00a0_01_74.html
カテゴリ 肥料 飼料作物 飼料用作物 施肥 とうもろこし 土壌診断 モニタリング

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