タイトル |
岩手県大船渡市吉浜地区における地域復興計画支援 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所 |
研究期間 |
2011~2011 |
研究担当者 |
福与徳文
山本徳司
桐 博英
丹治 肇
毛利栄征
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発行年度 |
2011 |
要約 |
岩手県大船渡市吉浜地区における地域復興計画支援として、助言や見守り、合意形成に向けての技術的支援を行っている。技術的支援としては、復興景観と津波浸水のシミュレーションを実施し、計画案に対する住民の理解を促進し、科学的根拠を与えている。
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キーワード |
地域復興計画、合意形成、技術的支援、復興景観シミュレーション、津波浸水シミュレーション
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背景・ねらい |
2011年3月11日、東北地方太平洋沖地震による巨大津波が東日本の沿岸を襲い、甚大な被害をもたらしている。こうした被災地において地域復興計画を作成していく上で、地域計画や農業土木の技術者はどのような支援を行っていけばよいのだろうか。
農村工学研究所・復興支援プロジェクトチーム(以下、農工研・復興支援チーム)は、岩手県大船渡市吉浜地区において地域復興計画作成を支援している。本成果では、吉浜地区においてどのような支援を行い、それにどのような効果が認められたのかを明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 農工研・復興支援チームの吉浜地区における支援活動は表1のとおりである。支援の基本的な考え方は、「住民自らが復興計画を作成しようとしている地区において、住民に寄り添って復興計画づくりを支援する」というものである。
- 支援内容は、(a)住民の経験則の整理や助言と見守り、(b)合意形成に向けての技術的支援である。技術的支援としては、復興計画案の景観シミュレーション(復興景観シミュレーション)と、津波浸水シミュレーションを実施している。
- 吉浜農地復興委員会が作成した復興計画案(図1)は、「防潮堤(第1堤防)を高くせず、巨大津波では越流を覚悟するものの、第2堤防兼集落道を高台の住居群と低地部の農地の間に設置し、住居への津波到達を防ぐ」というものである。
- 復興計画案の(a)第2堤防兼集落道、(b)第1堤防、(c)農地区画、(d)祭りの場に関する景観シミュレーションを、堤防の高さ・形状などを変えながら22事例(2次元デジタル画像処理10、3次元CG11、動画1)作成し、住民説明会や役員会において被災住民に提示している。図2は第2堤防に関するシミュレーションの一つである。
- 復興景観シミュレーションに対する住民の反応をみると、復興計画案に対する吉浜住民の理解が促進された上、住民が復興に向けての元気を取り戻すという波及効果も認められる(図2)。その一方で、第2堤防整備による津波浸水範囲に対する不安も表明されたため、津波浸水シミュレーションを実施している。
- 吉浜農地復興委員会が作成した復興計画案と第1堤防の高さを2倍にした場合の津波浸水シミュレーションを行ったところ、第2堤防による津波減勢効果は明らかとなり、住民が作成した復興計画案に科学的根拠を与えるとともに、農地区画の形状によって津波の浸水範囲が異なるといった新たな技術的課題を明確にしている(図3)。
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成果の活用面・留意点 |
- 吉浜地区における復興計画作成の進捗状況は、本成果執筆時点では、まだ住民側の要望が行政側に伝えられて協議を行っている段階である。本成果は、速報性を重視した中間報告的なものであることに留意されたい。
- 復興景観シミュレーションや津波浸水シミュレーションによる技術的支援は有効であり、他の津波被災地における地域復興計画作成支援に用いることができる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nkk/2011/412a0_10_06.html
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カテゴリ |
画像処理
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