タイトル |
放牧畜産経営の展開が中山間地域農業の再編に及ぼす効果 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター |
研究期間 |
2012~2012 |
研究担当者 |
千田雅之
大石 亘
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発行年度 |
2012 |
要約 |
小規模稲単一経営の多い中山間地域では、年金生活者の家計を維持できる所得確保の可能な放牧畜産経営により、農地管理と家畜飼養管理作業を低減しながら農地の活用と肉用牛の増頭が可能となり地域全体の所得は増加する。
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キーワード |
中山間地域、水田、肉用牛、放牧、地域農業計画モデル
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背景・ねらい |
中山間地域では、農業労働力の脆弱化が進む一方、中大型機械化による営農展開の困難な小区画圃場を抱え小規模稲作が多くを占めるなかで、耕作放棄を回避しながら地域農業の維持できる展開方向が模索されている。このような地域条件では、農業再編方向の一つとして、放牧畜産経営の展開が期待される。そこで、農林業センサスより中山間地域の農業構造を明らかにしたうえで、現行の稲作中心の農業から放牧畜産経営中心の農業へ再編した場合の影響を、地域農業計画モデルを用いて明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 平均的な中山間地域旧町村の農家戸数は85戸で、耕地面積1.5ha未満の小規模稲作経営が圧倒的に多い(2010年センサス)。耕作放棄地は24ha存在し耕地面積と合わせると110haの農用地が存在する。これをもとに、地域農業を構成する営農類型として、(1)小規模稲単一経営、(2)中規模稲単一経営、(3)稲・肉牛複合経営(牛は通年舎飼)、(4)繁殖牛の季節放牧を行う肉牛単一経営(以下、放牧畜産経営)を設定し、それぞれの営農計画モデルを作成し最適解を求める。その結果、土地利用面積及び所得は、類型(4)の放牧畜産経営が最大で、土地利用面積は類型(2)の中規模稲単一経営の2倍以上、農業所得は定年退職後の年金生活者の家計を満たす水準を確保できる(表1)。
- 放牧畜産経営の展開が地域農業に及ぼす効果を明らかにするため、地域農業計画モデルを構築する。同モデルは、上述の4類型を表すプロセスで構成される単体表であり、利用可能な農地面積、農家数を制約条件として、地域全体の農業所得を最大にする類型別戸数等を試算できる(表2)。
- 地域農業計画モデルを用いて試算した結果、放牧畜産経営の存在しない現状では、類型(1)~(3)の土地利用面積が少ないため、地域全体で約47haの遊休農地が発生する。放牧畜産経営の展開を想定した場合、それらが13戸展開することで遊休農地の解消を図ることができる。また、地域の繁殖牛頭数は118頭に増え、農業所得は約7,800万円に3,600万円以上も増加する一方、10a当たり投下労働時間は現状の46時間から40時間に減少する(図1、図2)。
- 地域農業の多くを占める小規模稲単一経営の離農を考慮した場合、遊休農地の発生を抑制するには、稲作農家の20%減(14戸)に対して、1戸の放牧畜産経営が必要となる。また、稲作農家の減少に伴い、地域全体では稲作面積及び農産物販売額は減少するが、放牧畜産経営の展開により農地と農業所得の維持を図ることができる。
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成果の活用面・留意点 |
- 中山間地域の農業再編の一つの方向として、行政、普及指導者の活用が期待される。
- 現行米価(13千円/60kg)、子牛価格(38万円/頭)、米生産費、営農現場での子牛生産の技術係数を用いた個別営農計画モデル、地域農業計画モデルによる試算値である。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/narc/2012/114a0_03_03.html
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カテゴリ |
機械化
経営管理
飼育技術
水田
中山間地域
肉牛
繁殖性改善
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