L-カルニチンは牛体外受精卵の胚盤胞期への発生率と耐凍性を高める

タイトル L-カルニチンは牛体外受精卵の胚盤胞期への発生率と耐凍性を高める
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所
研究期間 2010~2012
研究担当者 ソムファイ タマス
稲葉泰志
金田正弘
下司雅也
永井 卓
高橋利清
発行年度 2012
要約 発生培地へのL-カルニチンの添加により、牛体外受精卵内の脂肪が減少し、胚盤胞期への発生率や凍結保存・融解後の生存率が高くなる。
キーワード ウシ、体外受精卵、体外発生、L-カルニチン、胚盤胞、発生率、凍結保存
背景・ねらい 優秀な牛の受精卵を受胚牛に移植する受精卵移植技術により、優れた資質を受け継いだ子牛を多数得ることが可能となる。この技術の一つである体外受精卵移植技術は、食肉処理場で本来ならば廃棄される卵巣内の卵子を有効活用する画期的な技術であるが、わが国における受精卵移植産子のうち、体外受精によるものは10.6%(2,403頭、2009年度)にとどまっている。その理由の一つとして、体外受精卵が凍結に弱いことが挙げられる、耐凍性や受胎性の高い高品質な体外受精卵の生産技術の開発が急務となっている。牛の受精卵は、マウスなどと比較して脂肪含量が多く、そのために耐凍性が低いことが低生存率の一因と考えられている。一方、L-カルニチンは、細胞内の脂肪を減少させることが知られている。そこで、牛体外受精卵の発生培養液にL-カルニチンを添加し、受精卵の脂肪の減少に伴う体外培養時の胚盤胞期への発生率や凍結保存・融解後の生存率の向上効果を解明する。
成果の内容・特徴
  1. 食肉処理場由来卵巣から吸引採取した牛未成熟卵子を体外成熟・体外受精し、実験に供した。牛体外受精卵をL-カルニチン添加あるいは無添加の5%FCS添加CR1aa培地で7日間培養する。0.6mg/mlのL-カルニチン添加により、無添加の対照区に比べて有意に胚盤胞期への発生率が向上する(図1)。
  2. 0.6mg/mlのL-カルニチン添加培地で発生した胚盤胞期胚の緩慢凍結・融解後の生存率は、無添加の対照区に比べて有意に高くなる(図2)。
  3. 胚盤胞期胚の脂肪含量をナイルレッド染色により調べると、0.6mg/mlのL-カルニチン添加培地で発生した胚盤胞期胚の脂肪含量は、無添加の対照区に比べて有意に減少する(図3)。
成果の活用面・留意点
  1. L-カルニチンは、健康食品に使用されるなど生体に対して安全で、培養液1mL(最大200個の受精卵の培養が可能)あたり4円と安価な上、効果も大きいことから、牛の受精卵の体外生産や凍結の現場における積極的な利用が期待される。
  2. 5%FCS添加CR1aaを発生培地として使用した成果であり、他の発生培地の場合には濃度等の検討が必要な可能性がある。
  3. 移植試験未実施のため、今後、正常産子が得られるかを検討する必要がある。
図表1 236035-1.png
図表2 236035-2.png
図表3 236035-3.png
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nilgs/2012/130c0_03_04.html
カテゴリ 受精卵移植

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