タイトル |
放射性セシウム汚染サイレージの圃場還元作業と飼料作物への移行程度 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所 |
研究期間 |
2012~2012 |
研究担当者 |
天羽弘一
阿部佳之
小島陽一郎
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発行年度 |
2012 |
要約 |
放射性Cs濃度が4,560Bq/kgの牧草サイレージ22,200Bq/㎡相当量を圃場に散布・すき込み処理後に飼料作物を栽培した場合、作物中放射性Cs濃度の上昇は限定的である。サイレージから作物への放射性Cs移行は、土壌からの移行に比べ大きくはない。
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キーワード |
飼料作物、牧草サイレージ、放射性セシウム汚染、圃場すき込み
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背景・ねらい |
原子力発電所事故に由来する放射性セシウム(Cs)を飼料としての暫定許容値を超えて含有する牧草・飼料作物が大量に現存する。圃場すき込みが可能な放射性Cs濃度(8,000Bq/kg現物以下)のものでも、次作物への移行のおそれから圃場すき込みによる処理は進んでいない。このような汚染牧草サイレージについて、圃場にすき込んだ後の飼料作物への放射性Cs移行を調査し、圃場還元利用の可能性を示す。
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成果の内容・特徴 |
- ロールベールラップサイレージを、ベールシュレッダやフィードミキサ等により解体切断後、マニュアスプレッダに積載し、圃場に散布する。細断型ロールベーラで梱包されたベールでは、マニュアスプレッダ荷台上で開封してフィルムとネットを除去すると、追加の細切作業を必要とせず、そのまま圃場散布が可能である(図1)。
- 原子力発電所事故直後のフォールアウトを受けた2011年産ライムギのロールベールラップサイレージ(4,560Bq/kg現物、490kg/a)を圃場に散布し、1㎡あたり22,200Bqの放射性Csを施用した圃場(面積4.5a)において、散布作業前後および作業中の空間線量率には明確な変化は観察されない(データ略、使用圃場の空間線量率は約0.4µSv/h)。
- 前項の圃場において栽培されたオーチャードグラスの放射性Cs濃度は、同一圃場内の汚染サイレージ非施用部分に比して平均2.3Bq/kg(水分80%換算値)上昇するが、牛用飼料の暫定許容値(100Bq/kg、水分80%換算値)に比べると僅かである(図2)。飼料用トウモロコシでは、汚染サイレージ施用による放射性Cs濃度の変化は見られない。
- 放射性Csの土壌から作物への移行係数については、両作物ともにサイレージ施用の有意な影響は見られず、施用された汚染サイレージ中の放射性Csが施用以前に土壌に含まれていた放射性Csに比べて移行し易いとは言えない(表1)。
- プラウ耕によるすき込み前のサイレージと表層土壌との混和処理(図1)の効果は、作物中放射性Cs濃度においても、移行係数においても、明瞭ではない(図2、表1)。
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成果の活用面・留意点 |
- 飼料利用できないレベルに放射性Csで汚染された牧草サイレージを圃場還元処理する際の参考知見となり、行政の施策推進にも参照利用される。
- 畜産草地研究所那須研究拠点の圃場条件下における2種類の飼料作物の結果であり、土壌や作目等の条件により放射性Csの移行程度は異なる可能性がある。なお、今回の試験ではサイレージ施用による収量への影響は認められなかった。
- 8,000Bq/kgを超えるものは指定廃棄物となり、すき込み処理は認められていない。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nilgs/2012/510a0_01_01.html
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カテゴリ |
飼料作物
飼料用作物
とうもろこし
ライ麦
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