わが国で18年ぶりに発生した馬伝染性貧血の診断と対応

タイトル わが国で18年ぶりに発生した馬伝染性貧血の診断と対応
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所
研究期間 2011~2012
研究担当者 小西美佐子
亀山健一郎
芝原友幸
村上賢二
山川 睦
発行年度 2012
要約 感染馬の摘発・淘汰によりわが国が清浄化した馬伝染性貧血が、18年ぶりに発生した。本事例は、国の天然記念物である野生馬群でウイルスが維持されていたことを明らかにし、定期検査の重要性を再認識させる警鐘的事例として重要である。
キーワード 馬伝染性貧血、御崎馬、家畜伝染病、抗体検査、遺伝子検査
背景・ねらい 馬伝染性貧血(EIA)は、馬伝染性貧血ウイルス(EIAV)感染によって引き起こされる馬の不治の慢性消耗性疾病である。わが国では、家畜伝染病予防法によって定期検査による感染馬の摘発・淘汰が義務づけられており、1993年以降EIAの発生は認められていない。しかし、2011年3月、野生馬群(御崎馬)から導入した馬2頭でEIAV感染が確認され、殺処分された。本疾病防除のため、感染ウイルスの遺伝子解析とともに、2頭の導入元で天然記念物指定の御崎馬における感染の有無の確認および対応が求められる。
成果の内容・特徴
  1. EIAV感染が確認された馬2頭(Miyazaki2011およびFukuoka2011)は、寒天ゲル内沈降試験による抗体検査およびnested PCRによる遺伝子検査の結果がすべて陽性であった。本事例は、わが国で18年ぶりのEIA発生となる。
  2. Miyazaki2011およびFukuoka2011から検出されたEIAVのgag遺伝子の塩基配列を決定し、系統樹を作成した(図1)。両株の遺伝子相同性は95%以上であり、両株と過去の国内分離株の相同性は80-82%である。一方、近年海外で分離されたEIAVと両株の相同性は80%未満である。この結果から、本事例のウイルスは国内で過去に流行していた株が変異した可能性が考えられる。
  3. 2頭の導入元である御崎馬について抗体検査を実施したところ、96頭中12頭が陽性となった。野生馬は家畜伝染病予防法に基づく殺処分の対象外であるが、天然記念物である同群の保全ならびにわが国のEIA清浄化を遂行するため、抗体陽性馬は全頭淘汰された。
  4. 12頭の感染馬のうち1頭の末梢血白血球を非感染馬に静脈内接種したところ、接種後13日より2日間、40℃の発熱を示した。発熱2日目(接種後14日)よりEIAV遺伝子が、また接種後27日より抗体が検出された(図2および3)。この結果により、本事例の原因がEIAVであることが証明される。
成果の活用面・留意点
  1. 本事例は、EIAの発生として国際獣疫事務局(OIE)に報告されている。
  2. 本事例により、定期的な検査の重要性が改めて認識された。天然記念物である御崎馬については、群の清浄性を継続的に確認し、馬群保全およびウイルス伝播阻止に努める必要がある。
図表1 236063-1.png
図表2 236063-2.png
図表3 236063-3.png
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/niah/2012/170a1_01_01.html
カテゴリ 病害虫 防除

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