タイトル |
嵩上げをしたフィルダム堤体の地震時挙動特性 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所 |
研究期間 |
2011~2012 |
研究担当者 |
田頭秀和
林田洋一
増川 晋
黒田清一郎
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発行年度 |
2012 |
要約 |
嵩上げをしたフィルダム堤体は、剛性の異なる旧堤と新堤が複合した断面を有するため、旧堤と嵩上げした新堤の境界部と緩衝ゾーンでの加速度の急激な変化や、旧堤の変形に伴う新堤沈下などが地震時の特徴的な挙動である。
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キーワード |
嵩上げ、フィルダム、地震時挙動特性、耐震性能照査
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背景・ねらい |
既設ダムの嵩上げは、堆砂等によって減少したダムの有効貯水容量の回復やダム流入量の変化への対策としての貯水容量の増強を低コスト・低環境負荷で実現する手段として非常に重要である。その一方で、ダム規模が大きくなるために、信頼性の高い耐震性能評価が一層重要となる。 嵩上げをしたフィルダムは旧堤と嵩上げした新堤が複合した複雑な構造を有しているため、地震時には新設ダムとは異なる特有の挙動を示す。この特性を明らかにして、耐震性能評価における留意点を提示することを目的とする。
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成果の内容・特徴 |
- 3種類の嵩上げしたフィルダム堤体断面を設定して振動模型実験を実施し、振動特性や変位特性を計測する。堤体材料は硅砂6号を3種類の相対密度((1)50%:旧堤、(2)75%:緩衝ゾーン(旧堤と新堤の間に位置する築堤材料の遷移ゾーン)、(3)90%:または95%:新堤)で締め固めて剛性の違いを再現できる(図1)。
- 堤体破壊時の特徴的な現象として、旧堤のすべり、新堤堤頂部付近の沈下および亀裂が発生する(図2)。
- 天端における沈下量は、新堤が旧堤よりも大きい(図2、図4)。
- 旧堤と新堤の境界部では、旧堤の変形に伴う新堤の沈下が発生する(図2)。このことは、フィルダム堤体の沈下量をすべり変形だけで評価することが一般的であるが、新堤に比べて旧堤の剛性が小さい場合や嵩上げ高さが大きい場合等では、旧堤の沈下変形の影響を考慮した新堤の沈下量評価を行う必要が生じることを示唆している。
- 旧堤と新堤の境界部付近で応答加速度増幅率の急激な変化が発生する。このことは、旧堤と新堤の剛性の違いが原因と考えられる。
- 応答加速度増幅率(各高さの応答加速度/底面の入力加速度)は、緩衝ゾーンで急激に変化する。このことは、嵩上げしたフィルダム堤体の振動特性を評価するには緩衝ゾーンの影響を考慮する必要があることを示唆する(図3)。
- 大規模嵩上げタイプ(大規模嵩上げを行うために、旧堤の堤頂部を掘削除去するタイプ。CASE3)では、旧堤部天端中央の沈下量は他のケースに比べて非常に小さい。これは、天端幅が大きくなることでこの箇所の応答加速度が小さくなることが原因と考えられる。ただし、旧堤斜面部では他ケースと同様のすべりが発生する(図4)。
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成果の活用面・留意点 |
- 新堤と旧堤の剛性の違いに着目した地震時挙動特性を考慮した評価を行うことで、嵩上げをしたフィルダム堤体の耐震性能照査の信頼性を高めることができる。
- 農業用ダム安全評価事業や地方自治体におけるダム安全評価事業等で実施される耐震性能評価の参考資料としての活用が期待できる。
- 実際のダムへの適用に際しては、実験で使用した材料との土質特性の違いや相似則等に留意する。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nkk/2012/412b0_01_04.html
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カテゴリ |
低コスト
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