モミガラ等を用いた水田水口における農業用水の除染効果

タイトル モミガラ等を用いた水田水口における農業用水の除染効果
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所
研究期間 2012~2012
研究担当者 久保田富次郎
濵田康治
人見忠良
発行年度 2012
要約 モミガラ、ゼオライト等の資材を充填した袋を水田水口に置き通水すると、放射性セシウムが資材により回収され、用水の除染効果が見込まれる。モミガラは、ろ過機能による懸濁態Csの除去とともに、吸着による溶存態Csの除去も見込まれる。
キーワード ゼオライト、プルシアンブルー不織布、くん炭、用水除染、放射性セシウム
背景・ねらい 東日本大震災により生じた放射能汚染に関して、農業用水への影響はこれまでのところ限定的であると考えられている。しかし、警戒区域や作付け制限区域などの高線量地域において営農再開を視野に入れると、用水を通じた放射性物質の流入防止策を準備しておく必要がある。福島県内ではモミガラ等吸着・ろ過資材による用水中の放射性セシウム(Cs)低減が農家レベルで実践が容易であることから試みられているものの、その定量的な効果の確認はこれまで十分行われていない。そこで、本研究では渓流やため池など水源地の汚染に伴って農業用水が放射性Csにより汚染されたことを想定し、その対策の一環として各種資材を水田水口等に設置することによる放射性Csの除去効果を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 放射性Csの沈着量が多い地域の試験観測において、用水の沈殿槽で収集された沈殿物の放射性Cs濃度は高く、有機物含量も高い。この沈殿物は、2%硝酸水溶液により放射性Csが溶出することから、放射性Csの一部は有機物に含まれており、その分解により放射性Csが溶出する可能性がある(表1)。
  2. 現地試験における観察より、懸濁物質が少ない水に対しては、モミガラ層中でトラップされる深層ろ過とモミガラによる溶存態の吸着が主要メカニズムとして生じているが、懸濁物質が多い水では、モミガラ層またはモミガラを入れるネット状の袋の表面にケークろ過が生じる。ケークろ過が発生すると透水性が落ちるが、懸濁物質のろ過効率は一般に向上する。また、ゼオライトやくん炭においても懸濁物質は捕捉される。
  3. モミガラ、ゼオライト、くん炭の3資材を充填した袋を水田水口に置き、通水すると、用水中の放射性Csが回収され、資材の放射性Cs濃度が上昇する。資材の容量当たりの放射性Cs回収量は、相対回収効率(図1)の比較からゼオライトが最も高く、次いでモミガラ、くん炭の順である。また、ゼオライトにおいて比較した2種類の粒径の違いによる放射性Cs回収率への影響は小さく、通水量の影響が大きい。
  4. モミガラとくん炭では袋への充てん量が少なくなるほど、吸着・ろ過材の放射性Cs濃度は上昇する。放射性Cs濃度はゼオライト≪くん炭≦モミガラとなる。ただし、ゼオライトは1袋当たりの質量がモミガラの約6倍あるため、回収量はモミガラの1.4~1.5倍となる。
  5. 塩化セシウム溶液(Cs濃度1mg/L、10mg/L)中での吸着性を評価する簡易バッチ試験から、モミガラ、ゼオライト、くん炭等には、資材間で吸着量及び吸着率が異なるものの、溶存態Csの吸着機能が認められる(表2)。
成果の活用面・留意点
  1. 本情報は速報であり、今後、渓流やため池水掛り、または高い線量率の地域など多様な現地条件に応じた効果を検討する必要がある。
  2. 資材採用に当たっては、入手容易性やコスト、廃材処理法などを考慮する。
  3. 現地試験は、福島県福島市内で実施された。
図表1 236134-1.png
図表2 236134-2.png
図表3 236134-3.png
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nkk/2012/510a0_02_02.html
カテゴリ コスト 水田

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