赤かび毒デオキシニバレノールとニバレノールの毒性は異なる

タイトル 赤かび毒デオキシニバレノールとニバレノールの毒性は異なる
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所
研究期間 2011~2012
研究担当者 長嶋 等
発行年度 2012
要約 ヒト白血病細胞をデオキシニバレノールで処理するとサイトカインMIP-1αとMIP-1βの分泌を顕著に誘導したが、ニバレノール処理では両サイトカインの分泌は濃度に依存して減少した。このことは両かび毒の毒性作用は明確に異なることを示している。
キーワード デオキシニバレノール、ニバレノール
背景・ねらい 日本では赤かび毒デオキシニバレノール(DON)とニバレノール(NIV)による麦類の共汚染が観察されている。DONとNIVの化学構造は非常に似ており、違いはわずか1つの酸素原子である(図1)。両毒素が同じ毒性発現メカニズムで毒性を示すかどうかは、食品の安全性確保にとって重要である。本研究では、DONやNIVのようなトリコテセン系かび毒はヒトに白血球減少症を引き起こすことから、ヒト前骨髄球白血病細胞の培養細胞であるHL60を用いて両毒素の毒性の違いを比較・解析する。
成果の内容・特徴
  1. DON(分子量296)あるいはNIV(分子量312)(図1)で細胞を24時間処理後、培養上清中のタンパク質性の生理活性因子であるサイトカインの分泌量を定量している。測定したサイトカインは、白血球の増殖や分化を阻害する活性を持つマクロファージ炎症タンパク質(MIP)-1αとMIP-1βである。
  2. 0.3μg/mlのDON処理では、顕著に両サイトカインの分泌を誘導する(図2、3)。MIP-1βの分泌亢進は、MIP-1αより顕著である(図2、3)。これに対し、NIV処理によって両サイトカインの分泌は濃度に依存して減少する(図2、3)ことから、NIVではDONとは異なりMIP-1αとMIP-1βのどちらの分泌も誘導しないと考えられる。このことは、DONとNIVの毒性作用に明確な違いがあることを示している。
  3. DONは白血球の増殖・分化を阻害する活性を持つMIP-1αやMIP-1βの分泌を誘導することから、DONに関しては両サイトカインの分泌による影響が白血球減少症の発症過程に関与している可能性がある。
  4. 両毒素の毒性作用の違いをこれほど明瞭に示した研究は他にない。
成果の活用面・留意点
  1. DONとNIVでサイトカインの分泌が異なることを示した本成果は、これらのかび毒のリスク評価における重要な情報となる。
  2. 構造の類似したトリコテセン系かび毒の作用メカニズムを明らかにすることは、これらのかび毒のリスク管理上も重要である。本成果で示した細胞レベルでの毒性の違いを基に、さらに分子レベルでの解析を実施することによって、これらのかび毒の作用メカニズム解明につながる。
  3. 本成果は、株化された培養細胞で観察された現象である。
図表1 236138-1.png
図表2 236138-2.png
図表3 236138-3.png
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nfri/2012/180a0_02_02.html
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