長時間浸漬でご飯をおいしくするデンプン分解酵素の米粒内分布に品種間差

タイトル 長時間浸漬でご飯をおいしくするデンプン分解酵素の米粒内分布に品種間差
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所
研究期間 2009~2012
研究担当者 大倉哲也
露久保美夏
馬橋由香
津久井信也
三ツ井敏明
香西みどり
発行年度 2012
要約 米飯の「甘味」「つや」には、米内在性酵素がデンプンを分解してできる還元糖の寄与が大きい。米粒および炊飯過程中のデンプン分解酵素分布を解析した結果、長時間浸漬の「おいしさ」に寄与する分解酵素の分布と溶出挙動には品種間差が認められる。
キーワード 米、炊飯、品種間差、デンプン分解酵素、アミラーゼ
背景・ねらい 炊飯中に米デンプンから生成する還元糖は、飯の「甘味」「つや」への寄与が大きいことが知られている。これまで長時間浸漬により還元糖量が増加することが報告されているが、何処でどの酵素により還元糖が生成するかは知られていない。米の「おいしさ」の向上に資するために、長時間浸漬時の還元糖量増加に寄与するデンプン分解酵素の米粒内分布を調べ、品種間や調理中の溶出挙動の差を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 「日本晴」「コシヒカリ」「羽二重糯」から抽出した粗酵素液では、可溶性デンプンを基質とした場合の、還元糖生成活性とグルコース生成活性との差である「見かけのアミラーゼ(オリゴ糖生成)活性」の反応温度依存性は品種間で異なる傾向がある(図1)。
  2. 玄米を外側から研削して得た画分(100-90%[糠]、90-80%、80-70%、70-0%[胚乳])で、抗体を用いて酵素の有無を調べた結果(図2A)、いずれの品種においてもαアミラーゼⅡ-3(至適温度25℃付近)、イソアミラーゼ1(至適温度40℃付近)とプルラナーゼ(至適温度40℃付近)は胚乳中に、αアミラーゼⅠは外層部に存在する(図2B)。αアミラーゼⅡ-4(至適温度37℃付近)は「羽二重糯」でのみ、外層部に加えて胚乳にも存在している。酵素活性の至適温度から、これらの酵素が炊飯前の浸漬時に働くことが示唆される。
  3. 「日本晴」と「コシヒカリ」では、浸漬時に外層部にあるαアミラーゼⅠとαアミラーゼⅡ-4が炊飯液中に溶出し、胚乳にあるαアミラーゼⅡ-3、イソアミラーゼ1、αグルコシダーゼ、プルラナーゼは大部分が飯粒中に留まる(図3)。両品種では、炊飯液への酵素溶出温度が60℃まで上がっても浸漬中とほとんど変わらない(図3右、「コシヒカリ」の例)。
  4. 以上の結果から長時間浸漬(1~16時間)中の還元糖増加に関わるデンプン分解酵素の分布に品種間差があり、炊飯中の還元糖生成は胚乳にあるαアミラーゼⅡ-3、イソアミラーゼ1、プルラナーゼ、αグルコシダーゼの作用で起こると考えられる。
成果の活用面・留意点
  1. 今後免疫染色やElisa法に適した抗体を開発し、炊飯中の酵素の絶対量分布と各温度における酵素の比活性を解析して、酵素活性の時空間動態を明らかにすることにより「おいしさ」と強い相関を持つ酵素を特定する必要がある。
  2. アミロースが無い「羽二重糯」でαアミラーゼⅡ-4が胚乳中に存在していることから、デンプンの微細構造に応じてデンプン分解酵素の分布が変わる可能性がある。つまりアミロース含量の異なる品種だけでなく、同一胚乳内のデンプン微細構造の違いにより酵素分布が異なる可能性もある。
  3. アミラーゼは食味だけでなく、高温障害による白濁粒の発生にも関与している。高温障害防止を目的に低アミラーゼ活性を指標とする育種選抜の際には、食味とのバランスを考慮する必要がある。
図表1 236149-1.png
図表2 236149-2.png
図表3 236149-3.png
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nfri/2012/310d0_01_04.html
カテゴリ 育種 高温対策 品種 良食味

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