土壌凍結の発達程度が冬期の硝酸態窒素の移動に与える影響

タイトル 土壌凍結の発達程度が冬期の硝酸態窒素の移動に与える影響
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター
研究期間 2005~2011
研究担当者 岩田幸良
廣田知良
矢崎友嗣
鈴木伸治
発行年度 2012
要約 土壌凍結が深いほど、凍結時に下層から凍結層へより多くの水が移動するが、凍結深が0.4m程度では、硝酸態窒素の移動に大きな影響を与えない。一方、凍結が深い場合には凍結が浅い場合に比べ、融雪期に土壌水と硝酸態窒素の下方移動が抑制される。
キーワード 土壌凍結、土壌水分移動、融雪、積雪深、残留窒素
背景・ねらい 土壌凍結層が発達するときには下層から凍結層へと水が移動し、融雪期に厚い凍結層が形成されると融雪水の土壌への浸透が極端に抑制されるなど、土壌凍結層の有無や発達程度が冬期の土壌水分移動に大きな影響を与えることが知られている。主要な肥料成分の一つである硝酸態窒素は水と共に移動するため、土壌凍結の発達に伴う水移動が硝酸態窒素の移動に影響を与えている可能性が高いが、その詳細は不明である。十勝地域では気候変動に伴い土壌凍結深が顕著に減少しており、過去と現在で土壌中の水や溶質の移動が大きく変化した可能性がある。そこで、土壌凍結深が異なる場合の冬期の硝酸態窒素の鉛直分布と土壌水分移動の違いを、観測結果を解析することで明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 土壌凍結が深い方が、土壌凍結が浅い場合よりも、凍結層が発達するときに下層で生じる上向きの土壌水の移動量が多い(図1)。
  2. 土壌凍結前に採取した土壌の硝酸態窒素濃度は土壌凍結期間中に採取した値よりも空間的なバラツキにより小さい傾向があるが、土壌凍結の深さによらず、土壌凍結前に採取した土壌の硝酸態窒素濃度の鉛直分布と土壌凍結期間中に採取した土壌の硝酸態窒素の鉛直分布に顕著な違いがみられないことから(図2)、凍結層が形成されるときに生じる上向きの水移動(図1)は硝酸態窒素の移動に大きな影響を与えないことがわかる。
  3. 融雪水量がほぼ同じ(最大凍結深が0.11mの圃場は298mm、0.43mの圃場は323mm)にもかかわらず、最大凍結深が0.43mの場合には、厚い凍結層が融雪水の浸透を抑制することで、最大凍結深が0.11mの場合よりも融雪期の下方浸透量が少ない(図3)。
  4. 最大凍結深が0.11mの場合、融雪後の硝酸態窒素の濃度ピークが0.6m付近にあるのに対し、最大凍結深が0.43mの場合は濃度ピークが0.4m付近にあることから(図2)、厚い土壌凍結層が融雪水の浸透を抑制すること等の理由により、土壌凍結が深い場合には浅い場合に比べ、融雪期の窒素の下方移動が抑制されることがわかる。
成果の活用面・留意点
  1. 本成果は、除雪(雪割り)や圧雪等の積雪処理により土壌凍結を深くし、野良イモを防除した畑において、これらの積雪処理を加えていない畑よりも硝酸態窒素がより表層に残留する可能性が高いことを示す基礎的知見であり、これらの圃場における肥料成分の管理に活用できる。
  2. 本試験で示したデータは、試験開始前に緑肥(エン麦)を鋤込んだ北海道農業研究センター芽室研究拠点の乾性火山灰土壌畑において、除雪して土壌凍結を発達させ、その後に雪を積んだ試験区と、自然積雪状態の試験区において観測した結果をまとめたものである。
図表1 236180-1.png
図表2 236180-2.png
図表3 236180-3.png
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/harc/2012/210a3_01_03.html
カテゴリ 肥料 病害虫 えん麦 防除

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