新規二倍体フェストロリウムにおける顕著な染色体構造変異

タイトル 新規二倍体フェストロリウムにおける顕著な染色体構造変異
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター
研究期間 2003~2012
研究担当者 秋山征夫
木村健智
久保田明人
藤森雅博
山田-秋山仁美
高原美規
上山泰史
発行年度 2012
要約 イタリアンライグラス×トールフェスクの後代において、フェスク特異的染色体領域は検出されないが、顕著な染色体構造変異が観察される。ライグラス染色体は、フェスクとの交雑によって、変異原を用いずに改変が可能であることが明らかとなった。
キーワード フェストロリウム、染色体構造変異、FISH、GISH
背景・ねらい フェストロリウムは栄養価の高いライグラス属と環境耐性に優れたフェスク属との交配雑種である。イタリアンライグラス(2n=2x=14)とトールフェスク(2n=6x=42)間の雑種の場合、F1世代では四倍体であるが、次世代以降では二倍体から六倍体程度まで、様々な倍数性の後代を生じる。フェストロリウム品種は四倍体、六倍体が多く、二倍体のフェストロリウム品種はわずかである。高倍数性の品種では染色体数が安定せず、例えば四倍体品種の「パウリタ」は個体間で異なる染色体数(27-29本)を示すなど、世代間で遺伝的に安定しないことが危惧されている。我々はイタリアンライグラス×トールフェスクのF2世代267個体からフローサイトメトリーで選抜された二倍体69個体を放任授粉し、得られたF3世代1350個体から夏の草勢が良く、採種性の高い4個体を選抜し、F4世代400個体から記録的猛暑を示した2010年の夏以降に生存した7個体(DF1からDF7)を得た。本研究は、これらの新規二倍体フェストロリウムについて、そのゲノム構造を分子細胞学的手法によって明らかにすることを目的とする。
成果の内容・特徴
  1. DF1からDF7の全個体は2n=2x=14であり、異数体は存在しない。
  2. ゲノミックin situハイブリダイゼーション(GISH)法によるゲノム解析の結果、DF1からDF7ではフェスク特異的染色体領域は検出されない。フェスク(赤色)とライグラス(緑色)の両方に共通な領域は、染色体上に黄色のバンドとして検出される。DF2のみ、黄色のバンドを二本持つ染色体が観察される(図1)。
  3. 蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)法によって、フェスク、ライグラス共通領域には、植物種間で保存性の高い45S rDNAがマッピングされる。
  4. DF2における二つの45S rDNAサイトを持つ染色体は他の染色体よりも長く、異常な染色体組換え、染色体断片の転座または挿入によって染色体構造が変異している(図2)。5S、45S rDNAは相同染色体の有無にも差がある。
成果の活用面・留意点
  1. DF2における染色体構造変異は、放射線や化学物質等の変異原を用いずに、フェスクとの交雑によってライグラス染色体の改変が可能であることを示唆する。
  2. DF2における変異染色体をホモに持つ個体を作出、表現型特性を解析することで、有用育種母材となる環境ストレス耐性等を示すライグラス型二倍体フェストロリウムを得られる可能性がある。
  3. GISH法によってフェスク特異的染色体断片は検出されなかったが、GISH法の感度では検出できないサイズのフェスク断片が挿入されている可能性がある。
図表1 236197-1.png
図表2 236197-2.png
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/tarc/2012/120b0_05_07.html
カテゴリ 育種 イタリアンライグラス 品種

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