遠隔操縦および自律運転により除染作業を支援する無人トラクタ

タイトル 遠隔操縦および自律運転により除染作業を支援する無人トラクタ
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 生物系特定産業技術研究支援センター
研究期間 2011~2012
研究担当者 紺屋秀之
山下貴史
林 和信
塙 圭二
中山夏希
吉永慶太
窪田陽介
山田祐一
市来秀之
吉野知佳
西村 洋
宮原佳彦
発行年度 2012
要約 遠隔操縦および自律運転技術を適用した無人トラクタであり、作業中にオペレータが搭乗する必要がないため被ばくを回避でき、安全かつ効率的に除染作業の支援(表土削り取りのための砕土作業)ができる。
キーワード 除染、遠隔操縦、自律運転、無線通信、トラクタ
背景・ねらい 飛散してきた放射性物質の堆積により汚染された農地を除染する方法の一つとして、農用車両を用いてほ場表層の放射性物質を表土ごと削り取る方法がある。このような除染作業に従事する農用車両のオペレータは、空間放射線による外部被ばくや放射性物質を含む粉塵の吸引による内部被ばくにさらされる危険がある。そこで、オペレータの被ばく回避を目的に、安全かつ効率的に除染作業を支援することが可能な無人トラクタを開発する。
成果の内容・特徴
  1. 開発した無人トラクタを構成するシステムは、遠隔操縦・自律運転が可能なトラクタ本体と、遠隔地からトラクタの操作・監視を行う基地局からなり、トラクタと基地局間では無線通信にて情報が送受される(図1)。
  2. 遠隔操縦と自律運転を選択、実施できる操作体系を特徴としており、遠隔操縦時は、トラクタから伝送されるビデオ映像や車体情報(エンジン・PTO回転数、作業速度等)、及びGIS情報をもとにオペレータが基地局内に設置されている運転装置を用いて有人時とほぼ同等のトラクタ操作を遠隔操縦にて行う(図1)。基地局のGISシステムでは、地図情報のないほ場であっても遠隔作業でほ場の最外周を1周するだけで、その走行軌跡を基に未作業部分の作業経路計画を自動で作成することができる。自律運転時は、作成された作業経路計画に従って、トラクタが自律的に作業動作を実行する。
  3. 耕深センサと耕深調節機構を備えており、放射性物質が集中している土壌表層約5cm程度の任意の深さに遠隔操作で耕深を調整できる。
  4. 福島県相馬郡飯舘村のほ場で実施した表土削り取り作業のための砕土作業時(図2)の作業能率を表に示す。作業幅1.9m、平均作業速度0.32m/sで、作業能率は60min/10a、総作業時間に占める砕土作業時間の割合は23%であった。
  5. 無人トラクタを利用した除染作業では、表土除去前後の地表1cm高さの空間線量率が、0.74μSv/hから0.25μSv/hへ減じ、低減率は66%であった。土壌放射性セシウム濃度は、地表から深さ15cmまでの平均で、5474Bq/kg-dryから1795Bq/kg-dryへ減じ、低減率は67%であった(図3)。
  6. トラクタ周辺の空間線量率が2.74μSv/hの際、砕土作業時のキャビン内の空間線量率は2.1μSv/h程度であり無人トラクタを利用した除染作業により、その被ばくを回避できた。
成果の活用面・留意点
  1. 表土削り取り作業において最も粉塵が発生する砕土作業に利用することで、オペレータによる粉塵の吸引と内部被ばくの回避が期待できる。
  2. 遠隔操縦特有の操作感覚の習熟により、有人時と同等の作業精度で作業することができる。また、トラクタ周辺の安全確保に留意する必要がある。
  3. 無線による実用的な通信範囲は、見通しの利く条件で約1kmである。通信範囲をより広くするためには、有線ネットワークの併用や無線の中継等の対策が必要である。
図表1 236262-1.png
図表2 236262-2.png
図表3 236262-3.png
図表4 236262-4.png
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/brain/2012/600d0_01_03.html
カテゴリ 遠隔操作

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