カイコ完全長cDNA解読による遺伝子構造決定とデータベースによる公開

タイトル カイコ完全長cDNA解読による遺伝子構造決定とデータベースによる公開
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究期間 2010~2013
研究担当者 末次克行
門野敬子
上樂明也
山本公子
二橋亮
三田和英
嶋田透
発行年度 2013
要約 カイコの21種類の完全長cDNAライブラリを作製して11,104クローンについて塩基配列を決定した。得られた配列情報を用いた解析により、カイコの多くの遺伝子の正確な構造を明らかにした。完全長cDNAの配列情報はアノテーション情報と共にデータベース上で国内外の研究者に公開した。
キーワード カイコ、遺伝子、ゲノム
背景・ねらい カイコは絹糸を作る産業上有用な昆虫であり、また農作物や森林に多大な被害をもたらす害虫が数多く含まれる「チョウ目昆虫」のモデル研究素材である。これまでに、生物研と中国の西南大学が中心となりゲノム配列を解読したが、ゲノム情報を創農薬等の産業に活用するためには、遺伝子のゲノム上の位置・構造の正確な決定が必要となる。「完全長cDNA」とは、遺伝子から転写されたメッセンジャーRNAの完全なコピーのことで、タンパク質を作るための完全な情報を備えており、その塩基配列は遺伝子構造や機能の解明に重要である。カイコゲノム情報の産業利用を加速させるため、完全長cDNAの塩基配列解読、及び配列情報のデータベースによる公開を行った。
成果の内容・特徴
  1. カイコの14の組織に由来する21種類の完全長cDNAライブラリを作製し、これらから合計約25万個の完全長cDNAを収集した。その中から重複しているものを除いた11,104個のcDNAを選抜し、塩基配列を決定した(図1)。
  2. 今回解読されたカイコ完全長cDNAと、これまでに蓄積してきた40万個以上のカイコのcDNA、あるいは予測遺伝子などの情報を統合して解析したところ、カイコの総遺伝子数はこれまでの推定値である約14,000よりも多く、17,000以上あることが明らかとなった。
  3. カイコと、オオカバマダラなどゲノム解読が完了した他のチョウ目昆虫との比較ゲノム解析により、生体防御関連遺伝子や構造遺伝子など、カイコ特異的な遺伝子グループの存在が明らかとなった。
  4. 今回解読されたカイコ完全長cDNAの情報は、ゲノム情報と統合して「カイコゲノム情報データベースKAIKObase (http://sgp.dna.affrc.go.jp/KAIKObase/)」として公開し、国内外の全研究者が利用できる体制を整備した(図2)。また完全長cDNAを、ゲノムリソースとして希望する研究者に配布できる体制を整備した。 
成果の活用面・留意点
  1. カイコのもつ多くの遺伝子の機能解明が進むことにより、有用遺伝子の探索に大きく貢献すると期待される。特に、多くの農業害虫はチョウ目に属することから、本成果は、チョウ目害虫の農薬抵抗性原因遺伝子の特定や、チョウ目害虫に選択的に効く新しい農薬の開発につながる標的遺伝子の特定などに貢献すると期待される。
  2. 完全長cDNAにより遺伝子構造が正確に決定されることにより、遺伝子機能解析の効率化が進み、カイコを利用した有用物質生産性の向上に必要な遺伝子の同定が加速すると期待される。さらに、カイコの糖鎖修飾に関わる遺伝子を特定してヒト型の修飾が行われるよう改変することにより、遺伝子組換えカイコを用いた医薬品等の品質や効果の向上も期待される。
図表1 236366-1.jpg
図表2 236366-2.jpg
研究内容 http://www.nias.affrc.go.jp/seika/nias/h25/nias02510.html
カテゴリ 病害虫 カイコ 害虫 データベース 抵抗性 農薬

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