単一ドメイン抗体によるマウス免疫応答の制御技術

タイトル 単一ドメイン抗体によるマウス免疫応答の制御技術
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究期間 2011~2013
研究担当者 佐藤充
佐久間智理
竹之内敬人
木谷裕
発行年度 2013
要約 抗体の重鎖あるいは軽鎖の可変部のみからなる単一ドメイン抗体を発現する遺伝子組換えマウスを作出した。単一ドメイン抗体は免疫応答で働くWASタンパク質のN末端領域に特異的に結合してそのシグナル伝達機能を阻害し、マウスの免疫応答を抑制した。
キーワード イントラボディ、単一ドメイン抗体、タンパク質機能阻害
背景・ねらい 細胞内には酵素タンパク質や遺伝子の働きを調節するタンパク質などがあり、これらのタンパク質は、それぞれ独自の働きをするために特異的な構造を持つ複数の部位から構成されている。これまで広く利用されてきた遺伝子欠損(ノックアウト)法では、特定のタンパク質全体としての機能は評価できたが、タンパク質を構成している特定部位の役割を個別に評価することはできなかった。本研究では抗体の優れた特異的結合活性を利用し、抗体の重鎖あるいは軽鎖の可変部のみからなる最小の単一ドメイン抗体を発現させることにより、標的タンパク質の特定の部位に結合させ、その機能を阻害させることに成功した。本技術により、様々な細胞内タンパク質の働きをより詳細に調べることが可能となる。
成果の内容・特徴
  1. 標的タンパク質として、T細胞でのインターロイキン2(IL-2)遺伝子の発現に関わるWASタンパク質(WASP)に着目した。
  2. WASPのN末端領域に特異的な抗体を産生する細胞から、抗体の重鎖および軽鎖の可変部(VH,VL)の遺伝子を単離し、VHまたはVLの単一ドメイン抗体として発現するDNAコンストラクトを作製した。DNAコンストラクトをマウス受精卵に注入し、細胞内でこれらの単一ドメイン抗体を発現する遺伝子組換えマウスを作出した(図1)。
  3. 遺伝子組換えマウスのT細胞では、単一ドメイン抗体が細胞内で発現し、WASPのN末端領域に強く結合していた。その結果、WASPの免疫シグナル伝達機能が阻害され、通常の免疫応答で起こるIL-2遺伝子の発現が抑制された(図2)。 
成果の活用面・留意点
  1. 抗体の優れた特異性を活用した細胞内発現抗体(イントラボディ)技術は、既存の遺伝子ノックアウト法やRNA干渉法とは異なり、標的タンパク質の特定部位をピンポイントに狙い撃ちし、機能阻害を誘導する技術である。今後、別の標的タンパク質においてもイントラボディによる機能阻害が誘導できるか検証する必要がある。
  2. 単一ドメイン抗体を用いたイントラボディ技術は、様々な疾病発症メカニズムの解明や医薬品開発の分野において大きく貢献できると考えられる。特に創薬分野において、分子標的薬をデザインする上で、標的部位の同定や評価など、探索研究での利用が期待される。
  3. 単一ドメイン抗体を標的となる細胞や組織へ導入することにより、様々な細胞応答を制御するための技術が開発できると期待される。
図表1 236371-1.jpg
図表2 236371-2.jpg
研究内容 http://www.nias.affrc.go.jp/seika/nias/h25/nias02515.html
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