タイトル | ススキの日本自生集団と中国産緑化種子集団との遺伝的差異 |
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担当機関 | (独)農業環境技術研究所 |
研究担当者 |
早川宗志 池田浩明 西田智子 下野嘉子 小沼明弘 赤坂舞子 黒川俊二 |
発行年度 | 2013 |
要約 | 緑化に利用されることの多いススキを対象に、核リボソーム遺伝子のITS領域を用いて系統地理学的分布を調査しました。ススキは、「中国+台湾+南西諸島」に分布するグループと「日本本土」に分布するグループに分かれたため、緑化に利用する際は、遺伝的かく乱に配慮して使用する範囲を検討する必要があると考えられます。 |
背景・ねらい | 近年、国立公園の法面緑化では周辺環境との調和に配慮して、在来種の利用が推奨されています。しかしながら、種子は外国で採取する方が安価なため、実際に使用されている種子のほとんどは輸入されており、日本の同種植物への遺伝的かく乱が危惧されています。そこで、外国産種子による遺伝的かく乱の有無を明らかにするため、草本植物の中で緑化に利用されることの多いススキを対象に、国内外の集団の遺伝的同一性を核リボソーム遺伝子のITS領域の遺伝子配列に基づいて検討しました。 |
成果の内容・特徴 | 緑化工事の影響が少ない国内の国立公園等29ヶ所と台湾から採取したススキ、および緑化用の中国産ススキ種子を用いて、日本在来ススキの系統地理学的分布と中国産ススキによる遺伝的かく乱の影響を調べました。系統解析に多用される核リボソーム遺伝子のITS領域(546塩基対)を用いて、各集団から約25個体の塩基配列の変異を解析したところ、既知ならびに今回新たに検出した塩基配列の併せて15遺伝子型が得られました(図1)。得られた遺伝子型の地理的分布から便宜的に2つのグループに分けたところ、グループ1は主に「中国+台湾+南西諸島」に、グループ2は「日本本土(トカラ海峡以北)」に分布していました(図2)。中国産ススキの遺伝子型(グループ1のA型)は、日本本土のススキ(グループ2)とは異なっていました。このように、日本のススキはトカラ海峡付近(渡瀬線)を境に異なるグループが分布している一方、日本本土から2つのグループ間の交雑型個体が発見されたため、これらのグループの地理的隔離状態は不完全であると考えられました。 以上より、日本のススキはトカラ海峡付近を境に2つのグループに分かれる傾向があり、日本在来ススキと中国産ススキは遺伝的に異なることが明らかになりました。国立公園のような自然植生度の高い場所で中国産ススキを緑化に使用する場合には、遺伝的かく乱に配慮して使用する範囲を検討する必要があると考えられます。 |
成果の活用面・留意点 | 本研究は環境省地球環境保全試験研究「緑化植物による生物多様性影響メカニズム及び影響リスク評価手法に関する研究」による成果です。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
研究内容 | http://www.niaes.affrc.go.jp/sinfo/result/result30/result30_38.html |