無催芽種子直播における低温発芽遺伝子qLTG3-1による初期生育量の増加

タイトル 無催芽種子直播における低温発芽遺伝子qLTG3-1による初期生育量の増加
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター
研究期間 2008~2012
研究担当者 福田あかり
片岡知守
白土宏之
福嶌陽
山口弘道
持田秀之
荻原均
発行年度 2013
要約 低温での発芽を早める遺伝子qLTG3-1を機能型で持つ水稲系統は、湛水水田に無催芽種子を直播した際、苗立ちが早まり地上部乾物重が増加する。
キーワード 稲、湛水直播栽培、低温発芽、無催芽種子、qLTG3-1
背景・ねらい 水稲の直播栽培は、育苗に必要な作業や資材を省略できるため、移植栽培に比べ省力・低コストである。しかしながら寒冷地では、春先の低温下において種子を播種するため、種子の発芽が遅れ、苗の生育が不良になる場合がある。苗をはやくに生長させるため、あらかじめ催芽させた種子を播種することが多いが、低温下においてもすみやかに発芽する種子を用いれば、催芽作業を省略できると考えられる。これまでに、水稲の低温での発芽を早める遺伝子として、qLTG3-1が同定されている(Fujino et al., 2008. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 105: 12623-12628)。しかしながら、qLTG3-1が実際に直播水田において有用であるかどうかは明らかでなかった。本研究では、機能型のqLTG3-1を持つ水稲品種「Arroz da Terra」と、qLTG3-1の機能を欠損した「奥羽365号」の交雑自殖系統群を用いて圃場試験を行い、機能型qLTG3-1による発芽促進が、無催芽種子を湛水直播した際の苗の生育に与える影響を明らかにしようとした。
成果の内容・特徴
  1. 奥羽365号/Arroz da Terra//奥羽365号 戻し交雑自殖系統群104系統を用い、16°Cでの浸種4日後発芽率、さらに無催芽種子を湛水水田に直播した際の35日後の苗の地上部乾物重について遺伝子座(QTL)の解析を行った結果、第3染色体上の同位置にArroz da Terra型で発芽率を高め、地上部乾物重を増加させるQTLを検出した(図1、表1)。このQTLは低温発芽遺伝子qLTG3-1を含む(図1)。
  2. 系統内で機能型(Arroz da Terra型)のqLTG3-1を持つものは、機能欠損型(奥羽365号型)のqLTG3-1を持つものに比べ16°C浸種4日後の発芽率が高い(図2)。さらに湛水水田に無催芽種子を播種した35日後の地上部乾物重が向上する(図2)。
  3. これらの結果は、無催芽種子を圃場に播種した際、機能型のqLTG3-1により種子の発芽を早めることで、苗が早くに生長を始め、高い生育量を獲得できることを示し、機能型のqLTG3-1の導入は、無催芽種子直播に適した育種素材の開発に有効である。
成果の活用面・留意点
  1. 湛水直播試験は秋田県大仙市の東北農業研究センター・大仙拠点内の試験圃場で行った。
  2. 水稲種子は2007年10月に採種を行った後冷暗所に保管し、休眠打破処理は行わず、翌年5月に試験に用いた。
  3. 機能型のqLTG3-1は、穂発芽性を高める可能性があるため、育種に利用する際には留意する必要がある。
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研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/narc/2013/narc13_s08.html
カテゴリ 育種 育苗 直播栽培 水田 水稲 低コスト 播種 品種

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