アミロースが減少する3種の小麦Wx-A1遺伝子における変異の特定

タイトル アミロースが減少する3種の小麦Wx-A1遺伝子における変異の特定
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 作物研究所
研究期間 2009~2012
研究担当者 山守誠
発行年度 2013
要約 小麦Wx-A1対立遺伝子のうち、Wx-A1c -A1e は一塩基多型によるアミノ酸置換、Wx-A1i はエクソンへの挿入配列によって澱粉のアミロース含量が減少する。開発したDNAマーカーによって、3種のWx-A1 は他の対立遺伝子と識別できる。
キーワード 小麦、Wx 遺伝子、アミロース、澱粉、DNAマーカー
背景・ねらい 澱粉のアミロース含量は小麦粉の特性を左右し、加工適性や製品の食感に関わる。アミロースは澱粉合成酵素の一種であるWxタンパク質によって合成される。通常、パン小麦では、Wx-A1、-B1、-D1タンパク質が働いているが、遺伝資源を電気泳動法で分析すると、各Wxタンパク質の分子量や等電点が変異した多型が見られる。これらは、Wx遺伝子に何らかの変異が起こったことによると考えられる。 
Wx-A1 対立遺伝子のうちパキスタンの在来品種に由来するWx-A1c 、デュラム小麦に由来するWx-A1e および-A1iによってアミロース含量は野生型Wx-A1a に比べて減少する。そこで、これらのアミロース含量減少の要因を遺伝子の塩基配列レベルで明らかにし、交配後代の選抜に利用できるDNAマーカーを開発する。
成果の内容・特徴
  1. Wx-A1a と比較して、Wx-A1c には第8および第9エクソンにアミノ酸置換を伴う一塩基多型(SNP)が一つずつある(図1)。後者の置換はトリプトファン→アルギニンで、正常なWx-B1 および-D1 タンパク質のこの位置はアルギニンであるため、アミロース減少の原因から除外される。したがって、第8エクソンのSNPによるグルタミン酸→グリシンが減少の要因である。
  2. Wx-A1e にはSNPが5つと第1イントロンに40塩基の欠失がある(図1)。このうち、アミノ酸置換を引き起こすSNPは第9エクソンのSNPによるグルタミン酸→リシンのみである。このグルタミン酸は、酵素機能に重要であるとの報告があることから、第9エクソンのSNPがアミロース減少(モチ)の要因である。
  3. Wx-A1i にはアミノ酸置換を伴わない3つのSNP、第1エクソンに3塩基の挿入、第1イントロンに40塩基の欠失、第12エクソンに376塩基の挿入がある(図1)。このうち、376塩基の挿入によってmRNAの3'末端が異常となり、アミロース含量が減少すると予想される。
  4. Wx-A1c とWx-A1e はWx-A1 遺伝子の第7~9エクソンを特異的に増幅するプライマーを用いたPCR産物を制限酵素で切断すること(CAPSマーカー)により他のWx-A1 対立遺伝子と識別できる。Wx-A1i はプライマー3'FR1と3'FR2を用い、他より376塩基(挿入配列の長さ)大きいPCR産物によって識別できる(図2)。
成果の活用面・留意点
  1. DNAマーカーは交配後代の選抜に活用できる。PCRの条件等はYamamori and Guzmán (2013)を参照のこと。
  2. Wx-A1cWx-A1eWx-A1iWx-A1a 由来のWxタンパク質のみを持つ小麦系統のアミロース含量を表1に示す。
  3. Wx-A1i に対するプライマーはWx-B1 あるいは-D1 も増幅する。
図表1 236458-1.jpg
図表2 236458-2.jpg
図表3 236458-3.jpg
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nics/2013/nics13_s04.html
カテゴリ 遺伝資源 加工適性 小麦 DNAマーカー 品種

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