オオムギの登熟過程でアリューロン層に蓄積する抗菌成分

タイトル オオムギの登熟過程でアリューロン層に蓄積する抗菌成分
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 作物研究所
研究期間 2010~2012
研究担当者 神山紀子
小野裕嗣
発行年度 2013
要約 オオムギの種子では登熟後期に抗菌成分であるホルダチンに属するホルダチンA β-D-グルコピラノシドが蓄積し、アリューロン層に局在する。
キーワード オオムギ、抗菌成分、ホルダチン、アリューロン層、登熟種子
背景・ねらい ホルダチン類は麦芽や実生、うどんこ病に感染した葉等で蓄積することが知られているオオムギ特有の抗菌成分であり、p -クマロイルアグマチン2分子またはp -クマロイルアグマチンとフェルロイルアグマチン各1分子が縮合した化合物(ホルダチンA、B)とそれらの配糖体である。一方、オオムギでは赤かび病やうどんこ病等真菌による病害に抵抗性のある品種育成が進められているが、フィトアレキシンに注目した選抜は行われていない。フェノール性化合物の生合成が病虫害や紫外線等の傷害で誘導されること、一部は抗菌活性をもつことが知られているが、オオムギ種子中のフラボノイドやフェノール酸等のフェノール性化合物の多くは未同定であり、耐病性の指標として活用しうる成分の知見は不十分である。そこで、耐病性に関与する成分を探索するため、オオムギ種子に共通して含まれる未同定のフェノール性成分を単離・同定し、分布を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. オオムギの完熟種子には、オオムギ特有の抗菌成分であるホルダチンA β-D-グルコピラノシド(図1)が含まれている。
  2. 登熟過程のオオムギ種子のホルダチンA β-D-グルコピラノシドは、開花後20日から35日にかけて蓄積する(図2)。これはオオムギ種子の主要なポリフェノール成分であるプロアントシアニジンの蓄積時期よりも遅い。
  3. オオムギ種子を段階的に搗精すると、ホルダチンA β-D-グルコピラノシドは85%から70%の歩留まりで大部分が除去され、主食用に加工する際の一般的な歩留まりである55%では殆ど残らない(図3A)。これはアリューロン層に局在するフィチン酸の挙動(図3B)とほぼ一致しており、ホルダチンA β-D-グルコピラノシドもアリューロン層に分布している。
  4. 10品種の完熟種子におけるホルダチンA β-D-グルコピラノシド含量は、103~254 nmol/g dwであり、全ての品種で検出される。10品種の中では、皮麦と裸麦間、ウルチ性とモチ性間では有意差はみられないが、六条に比べて二条で有意に多い(表1)。
成果の活用面・留意点
  1. オオムギの発芽前の種子や根でホルダチン類を検出した過去の報告例はない。
  2. ホルダチンは複数の真菌に対して0.01 mMの濃度で抗菌活性を示すことが知られているが、この成分の完熟種子全体における平均濃度は一桁以上大きい0.79~1.9 mMと算出される。
  3. 赤かび病の原因菌であるFusarium graminearum に対するホルダチン類の抗菌活性は未検定であり、効果は不明である。
  4. ホルダチンA β-D-グルコピラノシドはビールの収斂味の原因成分の一つであり、食味に影響する可能性があるが、主食用途では通常は搗精により除去されている。
図表1 236459-1.jpg
図表2 236459-2.jpg
図表3 236459-3.jpg
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nics/2013/nics13_s05.html
カテゴリ 病害虫 うどんこ病 大麦 加工 抵抗性 品種 良食味

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