タイトル |
イチゴ産地復興を効率化するための高設栽培システム共通仕様 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所 |
研究期間 |
2012~2013 |
研究担当者 |
岩崎泰永
高市益行
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発行年度 |
2013 |
要約 |
東日本大震災からの復興に向け宮城県亘理町に建設されたイチゴ団地に導入するための、独立プランタ型栽培ベッドとクラウン加温装置を組み込んだ高設栽培システム共通仕様である。これにより栽培技術の共有や蓄積、栽培指導や問題解決を効率よく行える。
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キーワード |
イチゴ高設栽培、クラウン加温、独立プランタ型栽培ベッド、共通仕様
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背景・ねらい |
東日本大震災の津波によって大きな被害を受けた東北地方最大のイチゴ産地である宮城県亘理町、山元町では、鉄骨ハウスと高設栽培を導入した大規模なイチゴ団地の建設が進み、多くの生産者が平成25年秋から経営を再開する。イチゴ高設栽培システムは民間企業や県、JAなどが開発した多数のシステムが存在しているが、産地復興に向けて栽培技術の共有や蓄積、栽培指導や問題解決を効率よく行うため、共通の栽培システムの導入が望まれる。そこで、現地のニーズに即したイチゴ高設栽培の共通仕様を構築し、提案する。
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成果の内容・特徴 |
- イチゴ高設栽培システムに関するアンケート調査を行った結果、発生が多いトラブルとして、土壌伝染性病害の発生と排水不良による湿害があげられたことから、独立した発泡スチロール製の栽培槽を栽培ベッドとして用いる(独立プランタ型栽培ベッド、図1)。これにより、土壌病害被害の拡大を抑制できるとともに、地盤の沈下によって栽培ベッドの均平性が部分的に損なわれても、沈下した部分に排水が滞留しない。また、連続型の栽培ベッドで必要とされる培地を包む不織布製の防根シートが不要となるので、シートの目詰まりによる排水不良は生じない。
- 寒冷地では培地加温が必要であるとする回答が多かったが、独立プランタ型栽培ベッドでは熱交換パイプの埋設が構造上難しいため、クラウン加温システムを利用することによって低温期の生育促進と暖房用燃料消費量の削減を図る(図2)。
- 以上のことから、イチゴ高設栽培の共通仕様を以下のように構築し、提案する。固形培地(ヤシ殻繊維など)を充填した長さ75cmの栽培槽を並べた独立プランタ型栽培ベッドと、点滴タイプの潅水チューブと給液装置で構成する。補助暖房としてクラウン加温システムを装備する(図2)。ハウス内の状況(収穫盛期)を図3に示す。
- 共通仕様の高設栽培システムを導入にすることによって、栽培技術の共有や蓄積、栽培指導や問題解決を効率よく行うことが可能となる(図4)。
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成果の活用面・留意点 |
- 普及対象:宮城県亘理町イチゴ団地生産者に導入。
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:普及予定面積・普及台数等:宮城県亘理郡亘理町、イチゴ団地、99名、35ha
- その他:共通仕様は、全国のイチゴ生産に関わる研究者を対象として高設栽培システムに必要な仕様についてアンケート調査を行い、その結果を考慮して、生産現場で広く普及している高設栽培を開発した研究機関(香川県、愛知県)の協力を得て、宮城県農業・園芸総合研究所および地元普及センタやJAと協議しながら策定を進めた(図4)。 イチゴ団地で導入したシステムはJAみやぎ亘理、宮城県農業公社が業者に発注して生産、施工した。栽培槽の価格は680円/個、クラウン加温のコストは一般的な培地加温と同じ(同一部品を使用、約70万円/10a)。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/vegetea/2013/13_024.html
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カテゴリ |
いちご
経営管理
コスト
栽培技術
湿害
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