Fusarium asiaticumのデオキシニバレノール産生に及ぼすアグマチンの影響

タイトル Fusarium asiaticumのデオキシニバレノール産生に及ぼすアグマチンの影響
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所
研究期間 2011~2013
研究担当者 岩橋由美子
鈴木忠弘
発行年度 2013
要約 宿主植物の病害抵抗性物質の一つであるアグマチンは、F. asiaticumのかび毒デオキシニバレノール(DON)生成遺伝子群を誘導するとともに、解糖系、ペントースリン酸経路、脂肪酸β-酸化など活性化することによりDON生成を促進する。
キーワード Fusarium asiaticum、DON、脂肪酸β-酸化、GABA、アセチル-CoA
背景・ねらい 麦類やトウモロコシに赤かび病を起こすFusarium属のかびは、デオキシニバレノール(DON)などのかび毒を産生して自給飼料を汚染する。しかし、赤かび病病原かびがDONなどのかび毒を産生するメカニズムは未解明な部分が多い。したがって、自給飼料のかび毒汚染を効率的に防除するためには、まず飼料作物におけるかび毒の産生調節メカニズムを詳細に解析する必要がある。本研究では、フザリウム属かびの遺伝子発現量の変化を検出できるDNAマイクロアレイ解析と、LC-TOFMSを用いた代謝産物の解析により、かび毒産生調節メカニズムを解明する。
成果の内容・特徴
  1. 植物が産生する病害性抵抗物質の一種であるアグマチンは、Fusarium asiaticumのDON産生を促進する。アグマチンを培地に添加すると、F.asiaticum遺伝子の発現量は全体的に増加し、DONの合成に直接関わる遺伝子群(TRI1、3、4、5、6、9、11、14)の誘導が観察される(図1)。
  2. アグマチンを培地に添加すると、F. asiaticumの解糖系やペントースリン酸経路等の代謝産物の多くは増加するが、TCAサイクルの代謝産物はほとんど変化がなく、生育速度も変わらない。
  3. アグマチンを培地に添加すると、3-Hydroxyacyl-CoA dehydrogenase(ORFL)遺伝子の発現が45倍に誘導されていることから(図1)、ペルオキシゾーム内で脂肪酸のβ-酸化が促進され、これによってDONの前駆体であるアセチル-CoAの産生が増加し、DONの産生も増加する。さらに、ガンマアミノ酪酸(GABA)が検出されるが、これは添加したアグマチンから合成されたものであると考えられ、ここで生成したGABAはF. asiaticum内で信号伝達物質として使われている可能性がある(図2)。また、トランスポーター(TP)関連遺伝子群も高効率で誘導され、アグマチン等の取り込みやDONの排出に寄与している(図2)。
  4. 以上のように、植物が産生する病害性抵抗物質であるアグマチンによりF. asiaticumは代謝経路を大きく変化させ、DON産生を促進しているものと考えられる。
成果の活用面・留意点
  1. かび毒産生菌は植物の病害抵抗性物質の一つであるアグマチンに反応して2次代謝経路を大きく変更してかび毒を産生していると考えられ、かび毒産生メカニズムの一端が明らかになり、かび毒汚染の低減化に寄与する。
  2. かび毒産生のトリガーの特定や伝達経路についてはさらに詳細な検討が必要である。
図表1 236630-1.jpg
図表2 236630-2.jpg
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nfri/2013/nfri13_s01.html
カテゴリ 病害虫 飼料作物 とうもろこし 病害抵抗性 防除

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