タイトル |
TMRセンターを利用した酪農経営の省力化と収益確保の条件 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター |
研究期間 |
2011~2013 |
研究担当者 |
藤田直聡
久保田哲史
若林勝史
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発行年度 |
2013 |
要約 |
TMRセンターを利用すれば、飼料給与労働時間は大幅に減少し、同一規模の北海道平均よりも少なくなる。収益の目安となる乳代-飼料費が北海道平均を上回るためには、個体乳量10,500kg、TMR価格1,100円の場合、分娩間隔444日以内が必要である。
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キーワード |
酪農、TMRセンター、飼料費、乳代、分娩間隔
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背景・ねらい |
北海道の酪農経営では、労力的なゆとりの確保や飼養規模拡大を図る目的で、複数戸で飼料生産、調製、調理、給与サービスを行うTMRセンターを設立し、これらの作業を委託する事例が増加しつつある。他方、TMR給与や規模拡大に伴い繁殖成績が低下し、収益の減少する事例も見られる。また、TMR価格によっては、酪農経営の収益は必ずしも向上するとは限らない。 そこで、北海道上川管内に立地しているTMRセンターを対象に、設立前後の飼養頭数、労働時間等の経営変化を検討し、TMRセンター利用によって収益を確保するための条件を、個体乳量と分娩間隔、TMR価格から明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 分析の対象としたTMRセンター(Gセンター)は、飼料生産作業の大部分を運送会 社に委託し、構成農家の出役を少なく抑えている。また、TMRの構成においても、とうもろこしサイレージが多く、かつ機構で開発されたイアコーンサイレージも活用し、構成農家への供給価格を低く抑えている。構成農家数は9戸であったが、2013年度より8戸に減少している。構成農家の経産牛頭数はG1~G5の5経営で増加し、TMRセンター利用による飼料生産労働等の削減を、経産牛頭数の増加に振り向けられている。個体乳量については8経営が10,000kg以上であり、特にG4経営とG6経営は11,000kgを超過している。その一方で、離脱している構成農家も存在する(表1)。
- G1経営を例に、TMRセンター利用による労働時間の変化を見ると、経産牛1頭当た り117時間から62時間へと大幅に減少している。この結果、頭数を75頭から130頭に増やしているにもかかわらず、経営全体の労働時間は約700時間減少している。作業別にみると、飼料給与作業の減少が顕著にみられる。畜産物生産費調査に記載されているほぼ同一規模の労働時間と比較すると、G1経営の方が合計こそ多くなっているが、飼料給与作業および飼料生産作業は少ない(表2)。
- 収益に大きく影響する「乳代-飼料費」は、個体乳量と分娩間隔、TMR価格により異な る。Gセンターの飼料価格の平均は1,045円/日/頭で、構成農家の平均個体乳量は10,448kg、分娩間隔435日であり、「乳代―飼料費」は北海道平均よりも約3万円高い。しかし、農家間の格差も大きく、個体乳量が多く分娩間隔の短いG6経営では北海道平均より11万円以上高いが、乳量が低く分娩間隔の長いG9経営では約8万円下回る。「乳代―飼料費」が平均を上回るためには、個体乳量10,500kgの場合、分娩間隔455日以内とする繁殖管理が必要である(図1)。また、TMR価格1,100円/日/頭の場合は、個体乳量10,500kgで分娩間隔444日以内が条件となる(図2)。
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成果の活用面・留意点 |
- TMRセンターを利用して、収益を確保するための技術水準の目安として活用が期待される。
- 生産費調査のデータは2011年、事例のデータは2010年のものである。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/harc/2013/harc13_s05.html
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カテゴリ |
イアコーンサイレージ
規模拡大
経営管理
省力化
とうもろこし
乳牛
繁殖性改善
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