気候モデルMIROC5を用いた予測で将来まで「やませ」は発生する

タイトル 気候モデルMIROC5を用いた予測で将来まで「やませ」は発生する
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター
研究期間 2011~2013
研究担当者 菅野洋光
神田英司
発行年度 2013
要約 最新の気候モデルを用いて今後のやませ発生可能性について検討した結果、将来もやませは現在と同程度に出現し、北日本に低温をもたらすことが推測される。
キーワード やませ、気候モデル、MIROC5、PDWS
背景・ねらい 北日本においては、将来やませがどの程度の頻度で吹くのかを予測して対応技術を開発することが未来の農業の安定化に重要となると考えられる。最近は将来の気候を比較的良く再現できるモデルが多く開発されており、将来気候の高信頼度の再現実験も可能となっている。そこで本研究では最新の気候モデルを用いてやませの将来の発現可能性について検討し、今後の農業技術開発に資することを目的とする。
成果の内容・特徴
  1. やませ発生の検出のため、気候モデルMIROC5の、青森県八戸に最近隣の格子点気温、北海道稚内および宮城県仙台に最近隣の格子点気圧を用いている(図1)。八戸における気温は、現在(1980~2005年)の日平均気温の平均値に将来(2006~2100年)の気温上昇量を加えている。やませ型気圧配置を示すインデックスとして、稚内から仙台の気圧を差し引いた値(Pressure Difference between Wakkanai and Sendai: PDWS)を用いている。
  2. 将来気候におけるPDWSと、1000hPaにおける気温および風の夏季(6~8月)における回帰計算結果をみると、北日本付近には東北東の風が吹走しており、低温偏差域も北日本太平洋側に明瞭に形成されている。これは、現在の観測データにもとづいた計算と同様の結果であり、MIROC5でもPDWSによって将来のやませが適正に再現できることがわかる(図2)。
  3. 八戸の夏季気温の2006~2100年について直線回帰式を求めたところ、年間0.032°Cの割合で気温が上昇している。そこで、年々の八戸の夏季気温から気温増加量を減じた値(気温増加量偏差)とPDWSとの関係をみると、PDWSが高いほど気温増加量偏差は小さくなる関係が認められ(r=0.71)、PDWSは八戸の低温、すなわちやませの発生を統計的に有意に説明できる(図3)
  4. 八戸の夏季気温増加量偏差とPDWSの時間変化を見ると、10年程度のゆるやかな変動および年々の変動があり、0に近いPDWSが発現する年には八戸の気温も低下している(図4)。PDWSの13年移動平均値をみると、2030年頃と2085年以降に負の値が大きくなっているが、それ以外の期間は現在と同水準で出現している。以上より、やませは将来にわたっても現在と同程度に発生し、北日本に低温をもたらすことが推測される。
成果の活用面・留意点
  1. 用いた気候モデルは東京大学AORI・国立環境研究所・JAMSTEC共同開発によるMIROC (Model for Interdiciplinary Research on Climate) 5である。本モデルは海水面温度の応答性等が旧モデルに比較して改良されており、やませの再現実験に適している。温室効果ガス排出シナリオはRCP4.5でアンサンブル3本のうちのrun01を用い、マルチモデル解析は行っていない。1980年~2100年までの月平均値を解析の対象としている。
  2. 将来のやませは、現在と同程度の低温ではなく、温暖化による気温上昇下での相対的な低温をもたらすが、その時代の気温平年偏差は低くなることから、冷害に対する備えは将来も必要である。
図表1 236679-1.jpg
図表2 236679-2.jpg
図表3 236679-3.jpg
図表4 236679-4.jpg
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/tarc/2013/tarc13_s17.html
カテゴリ 凍害

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