タイトル |
新規糖質ホスホリラーゼの発見とそれらを利用したオリゴ糖製造技術 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所 |
研究期間 |
2011~2013 |
研究担当者 |
北岡本光
西本完
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発行年度 |
2013 |
要約 |
糖質ホスホリラーゼはオリゴ糖の合成に利用できる有用酵素であるが、これまで報告されている種類は多くない。今回、新たに4種の酵素を同定した。これらの新規ホスホリラーゼを利用して、種々のα-グルコシド及びβ-マンノシドを効率的に合成できる。
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キーワード |
オリゴ糖、ホスホリラーゼ、実用的製造技術、N-結合型糖鎖、セロビオン酸
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背景・ねらい |
通常良く行われている糖質加水分解酵素を利用したオリゴ糖製造では原料と同じ結合を持つオリゴ糖しか製造することができない。一方糖質ホスホリラーゼを用いたオリゴ糖製造法では原料と異なる結合のオリゴ糖を製造することが可能である。しかしながら、ホスホリラーゼの種類が少ないこと及びホスホリラーゼを利用する反応系の開発が進んでいないことから製造可能なオリゴ糖のバリエーションが少なかった。これらの難点を解消するために、新規なホスホリラーゼの探索とそれら酵素を利用するオリゴ糖合成複合酵素系の構築を行った。
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成果の内容・特徴 |
- 腸内細菌Bacteroides thetaiotaomicronから発見したManβ1,4GlcNAcホスホリラーゼ(表1)はN 結合型糖タンパク糖鎖のコア構造に含まれる二糖のManβ1,4GlcNAcを特異的に加リン酸分解する酵素である。β-マンノシドは化学合成の難しい糖として知られており、本酵素の逆反応の利用により生化学的に重要な二糖であるManβ1,4GlcNAcを効率的に製造することが可能である。
- 植物病原性細菌Xanthomonas campestrisおよび糸状菌Neurospora crassaゲノム中に確認された新規酵素セロビオン酸ホスホリラーゼ(表1)はセロビオン酸及びGlcβ1,3GlcUAを加リン酸分解する。セロビオン酸はいくつかの糸状菌によるセルロース分解の過程においてセロビオースデヒドロゲナーゼにより生成することが知られていたが、セロビオン酸自体の代謝過程は不明であった。本酵素の利用により、糸状菌によるセルロース分解に関する理解が進むとともに、セロビオン酸の合成が容易となる。
- 塩湖土壌に生息する細菌Bacillus selenitireducensには2-O-α-グルコシルグリセロールホスホリラーゼ、また、非病原性リステリア属細菌Listeria inocuaには1,2-β-マンノビオースホスホリラーゼといった新規ホスホリラーゼをコードする新規遺伝子が見いだされる。(表1)
- α-グルコース1-リン酸をα-マンノース1-リン酸またはβ-グルコース1-リン酸に変換する酵素系を開発した。α-マンノース1-リン酸およびβ-グルコース1-リン酸生成型ホスホリラーゼを組み合わせて用いることにより、蔗糖・澱粉・セロビオース等の安価な糖資源を出発原料としてα-グルコシド及びβ-マンノシドを調製することができる。(図1)
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成果の活用面・留意点 |
- 本研究で見いだされたホスホリラーゼをスクロースホスホリラーゼとの組み合わせ反応を行うことにより、Manβ1,4GlcNAc、セロビオン酸などの有用なオリゴ糖を実用的に製造することが可能である。
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図表1 |
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図表2 |
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研究内容 |
http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nfri/2013/nfri13_s15.html
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カテゴリ |
シカ
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