タイトル |
標的遺伝子をピンポイントに改変する普遍的な技術をイネで確立 |
担当機関 |
(独)農業生物資源研究所 |
研究期間 |
2012~2014 |
研究担当者 |
横井彩子
遠藤真咲
大槻並枝
雑賀啓明
土岐精一
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発行年度 |
2014 |
要約 |
標的遺伝子のピンポイント改変を普遍的に行える技術を、高等植物で初めて確立した。ポジティブ・ネガティブ選抜法を利用したジーンターゲッティングの後に、動く遺伝子(piggyBacトランスポゾン)を利用した足跡を残さないマーカー除去を行うことで可能になった。
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キーワード |
イネ、ジーンターゲッティング、piggyBacトランスポゾン
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背景・ねらい |
イネの遺伝子を改変した遺伝子に置き換える手法としては、ジーンターゲッティング法が確立している。しかしこれまでは、改変された遺伝子を持つイネから選抜に用いたマーカー遺伝子を完全に除去する方法がなかった。今回、足跡を残さない昆虫由来の動く遺伝子である「piggyBac(ピギーバック)」を利用することで、マーカー遺伝子の完全な除去が可能になった。
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成果の内容・特徴 |
- ポジティブ・ネガティブ選抜を利用したジーンターゲッティングにより、アセト乳酸合成酵素(ALS)遺伝子に除草剤(ビスピリバックナトリウム塩)耐性となるアミノ酸変異(2点変異)と選抜マーカーを導入し(図1A:ステップ1)、次に、piggyBacの転移によりマーカー遺伝子を除去してALS遺伝子上に2点変異のみを残すことを試みた(図1A:ステップ2)。
- イネ(品種:日本晴)のカルスに上記1のステップ1の処理を行い、ALS遺伝子に目的の点変異と選抜マーカー遺伝子が導入されたカルスを選抜した。これらのカルスに対してステップ2の処理を行い、得られた5系統100個体の再分化植物において完全にマーカーが除去されたかについて検証した。その結果、100個体中99個体でpiggyBacの転移によりマーカーが除去されていることが明らかとなった(図1B)。マーカー除去後のALS遺伝子の配列を解析したところ、piggyBacは足跡を残さずに転移し、ジーンターゲッティングにより導入した2点変異のみが残されていることが確認された。
- 上記2の再分化個体から得られた次世代の植物について、ALS遺伝子の転写レベルと除草剤耐性能を評価した。ALS遺伝子の転写レベルを、制限酵素処理により野生型ALSと2点変異を持つ改変型ALS遺伝子を区別して解析したところ(図2A)、改変型ALS遺伝子座からの転写産物も確認された。(図2B)。一方、改変型ALS遺伝子を持つ個体は、野生型ALS遺伝子を持つ個体に比べて明らかな除草剤耐性能を有することが示された(図2C)。
- ジーンターゲッティングとpiggyBacによるマーカー除去により、ALS遺伝子以外の複数の遺伝子のピンポイント改変に成功している。
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成果の活用面・留意点 |
- ALSに2点変異を持つ再分化個体から得られた次世代では、piggyBacの転移酵素を発現させるベクターを持たない、完全なマーカーフリー個体を得ることができた。この植物は、アミノ酸置換を付与するための変異以外には余計な配列を含まないことから、突然変異育種で得られた植物と同等と見なすことができると考えられる。
- piggyBacは、イネだけでなく様々な植物種で機能すると考えられる。そこで、様々な植物種において、高効率なポジティブ・ネガティブ選抜を利用したジーンターゲッティング系を確立することで、植物種を問わず標的遺伝子のピンポイント改変が可能となる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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図表5 |
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図表6 |
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図表7 |
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研究内容 |
http://www.nias.affrc.go.jp/seika/nias/h26/nias02603.html
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カテゴリ |
病害虫
育種
除草剤
品種
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